オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第18話
「……どうするか」
ノートに書いたその言葉を、テツヤはしばらく見つめていた。
副業でのミス。
やり直しにかかる時間。
寝不足による集中力の低下。
すべてが繋がっていた。
(このままじゃダメだな)
それは、はっきり分かっていた。
問題は――どう変えるか。
今までは、ただ「全部やる」だった。
工場も、コンビニも、副業も。
どれも手を抜かず、ちゃんとやる。
それが正しいと思っていた。
でも、それでは回らない。
(……全部を同じ重さで持ってるからか)
ふと、そう思う。
優先順位がない。
全部が「大事」だから、全部が中途半端になる。
その事実を、ようやく理解した。
ペンを手に取る。
ノートに三つ書く。
「工場」
「コンビニ」
「副業」
しばらく見つめる。
どれも必要だ。
生活のためには、どれも外せない。
でも――
(全部同じじゃないよな)
そう思う。
少しずつ、整理していく。
工場は、生活の基盤。
安定した収入。
コンビニは、その補助。
時間の融通がきく。
副業は――
(まだ“これから”だな)
今すぐ大きな収入にはならない。
でも、続ければ可能性はある。
その位置づけが、ようやく見えてきた。
「……じゃあ」
小さくつぶやく。
決めるしかない。
何を優先するか。
どこに力を使うか。
まず決めたのは、「削ること」だった。
コンビニのシフト。
今までなんとなく入れていた時間を見直す。
全部を入れる必要はない。
必要な分だけにする。
少しだけ、収入は減るかもしれない。
でも、その分時間ができる。
(時間を作るのも仕事か)
そう思う。
次に、副業。
やる時間を決める。
ダラダラやらない。
「この時間だけやる」と決める。
終わらなければ、次に回す。
完璧を目指さない。
ミスを恐れすぎない。
「やる量」と「質」のバランスを取る。
それが今の自分には必要だった。
そして――睡眠。
一番後回しにしていたもの。
でも、それが崩れると全部が崩れる。
「ここは削らない」
そう決める。
すべてを書き出す。
整理する。
今まで曖昧だったものが、少しずつ形になっていく。
(……やっと考えたな)
自分でもそう思う。
今までは、流れに乗っていただけだった。
でも今は違う。
自分で選んでいる。
その感覚が、少しだけ新しかった。
数日後。
実際に調整した生活を始める。
コンビニのシフトは減った。
副業の時間は決めた。
最初は違和感があった。
「これでいいのか?」という不安もある。
だが――
(前よりはマシだな)
そう感じる瞬間があった。
副業中。
以前より集中できる。
時間が限られている分、無駄が減った。
工場でも、前ほど疲れが残らない。
小さな変化。
でも、それは確実だった。
休憩室。
佐藤と顔を合わせる。
「どう?最近」
いつもの軽い口調。
テツヤは少しだけ考えてから答える。
「……ちょっと変えました」
「お、いいじゃん」
佐藤は笑う。
「どう変えたの?」
「時間、決めてやるようにしました」
「全部やるんじゃなくて、優先つけて」
言いながら、自分でも整理されているのが分かる。
佐藤は小さく頷く。
「それができるなら大丈夫だな」
その言葉に、少しだけ安心する。
帰り道。
夜の街を歩く。
以前と同じ景色。
でも、確実に違う。
(ちゃんと回ってるな)
劇的な変化はない。
でも、崩れてはいない。
それだけで十分だった。
部屋に戻る。
ノートを開く。
新しく書き加える。
「優先順位を決めた」
「時間を決めた」
「少し楽になった」
そして最後に。
「自分で決めた」
ペンを置く。
その一行が、一番大きかった。
今までは流されていた。
でも今は違う。
「……これでいいか」
静かにつぶやく。
完璧じゃない。
でも、自分で選んだ形。
それが、今の答えだった。

