【フリーター奮闘記】テツヤ成り上がり|第17話|新たな問題発生

オリジナルマンガ

「……もう少しやるか」

そう思えていたはずだった。

副業にも少しずつ慣れ、作業のスピードも上がってきた。
報酬もわずかに増え、“やれば変わる”という感覚も見えてきていた。

劇的ではない。
それでも確実に前に進んでいる。

――そう思っていた。

だが、その流れは、ある日突然止まる。

きっかけは、小さな違和感だった。

「……あれ?」

作業を終え、提出したはずのデータ。

その確認画面に、見慣れない表示が出ていた。

「差し戻し」

一瞬、意味が分からなかった。

(……差し戻し?)

クリックして内容を確認する。

「記載ミスあり」
「フォーマット不備」
「再提出してください」

短い文章。

だが、その内容は明確だった。

(……ミス?)

自分では気づかなかった。

何度も見直したはずだった。

それでも、間違っていた。

「……マジか」

小さくつぶやく。

ただの修正で済む話。

それは分かっている。

だが――

(これ、全部見直しか?)

一気に気が重くなる。

やり直し。

時間は、当然その分かかる。

その日の夜。

再提出のために作業をやり直す。

だが、思った以上に時間がかかる。

(……全然終わらないな)

集中しているはずなのに、進みが遅い。

一度ミスをしたことで、必要以上に慎重になっていた。

(ここも大丈夫か?)
(これ、合ってるか?)

確認の回数が増える。

その分、時間もかかる。

気づけば、深夜を回っていた。

次の日。

明らかに寝不足だった。

工場での作業中、集中が続かない。

同じ動作を繰り返しているはずなのに、ミスをしそうになる。

(……やばいな)

自分でも分かる。

バランスが崩れ始めている。

その日の夜。

コンビニのレジで、ほんの一瞬だけ手が止まる。

客の視線。

「あ、すみません」

慌てて対応する。

(……ダメだな)

小さくため息をつく。

副業を続けることで、他の仕事に影響が出始めていた。

それは、一番避けたかったことだった。

休憩室。

椅子に座り、ぼんやりと天井を見る。

(……どうする)

頭の中で、同じ問いが繰り返される。

やめるか。
続けるか。

シンプルな選択。

だが、簡単には決められない。

(ここまでやってきたしな……)

少しずつ積み上げてきたもの。

それを、ここでやめるのか。

でも――

(このままだと、どっちも中途半端になる)

それもまた事実だった。

「どうした?」

佐藤の声。

気づけば隣に座っていた。

「……ちょっと、ミスして」

素直に話す。

差し戻しのこと。
やり直しで時間がかかっていること。
そして、今の状態。

佐藤は黙って聞いていた。

そして、一言。

「まあ、あるあるだな」

軽く言う。

「……そうなんですか?」

「最初はみんなミスるし、崩れる」

あっさりと言う。

「むしろ、そこからどうするかだよ」

テツヤは黙る。

(どうするか……)

簡単な言葉。

でも、答えは簡単じゃない。

「全部やろうとしてない?」

佐藤が続ける。

「工場も、バイトも、副業も、全部完璧に」

一瞬、言葉に詰まる。

(……やってるかもしれない)

自覚はあった。

「それ、無理だよ」

はっきりと言う。

「どっかで調整しないと、崩れる」

静かな口調だった。

でも、その言葉は現実だった。

帰り道。

夜の空気が、少しだけ重く感じる。

(……調整、か)

考える。

時間の使い方。
優先順位。

今まで、なんとなくでやってきた部分。

それを、ちゃんと考えなければいけない段階に来ていた。

部屋に戻る。

ノートを開く。

これまで書いてきた内容の横に、新しく書き加える。

「ミス発生」
「時間足りない」
「バランス崩れた」

ペンを止める。

少し考える。

そして、ゆっくりと書く。

「どうするか」

それが、今のテーマだった。

逃げるのは簡単。
でも、それでは何も変わらない。

かといって、無理を続ければ、どこかで壊れる。

「……ちゃんと考えるか」

静かにつぶやく。

問題は起きた。

でも、それは“次に進むための問題”だった。