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【フリーター奮闘記】第9話 『3億円の使い道』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「宝くじは夢への投資?」です。

駅前の宝くじ売り場で足を止めたマサシ。

「買わなきゃ当たらない」

その一言から始まるのは、いつものように自分に都合のいい理論です。

「これはギャンブルじゃない。投資だ。」

そう言って宝くじを購入した瞬間から、マサシの頭の中ではすでに億万長者の人生がスタート。

タワーマンション、高級寿司、ワイングラスを片手に余裕の笑み――。

さらには同級生の亮や好美に成功者として再会する未来まで思い描き、妄想だけで数時間を幸せに過ごしてしまいます。

しかし現実は非情。

当選結果は、300円。

壮大な未来が一瞬で消え去る中、

「金で買える幸せなんて薄っぺらい」

と強がる姿は、マサシらしい負け惜しみ全開の名場面です。

そして最後は、その300円で発泡酒を買い、

「これが現実的な投資だな」

と締めくくるオチまで、最後の最後までマサシ節が炸裂する一話となっています。

【本文】

ある日の帰り道、マサシは駅前の宝くじ売り場の前で足を止めた。
ガラス越しに貼られたポスターには「億万長者誕生!」の文字。派手な色の広告が夜の街に輝いている。

「……買わなきゃ当たらない」

マサシは腕を組みながら真剣な顔でつぶやいた。

「これはギャンブルじゃない」

「投資だ」

自分にそう言い聞かせると、財布から千円札を取り出す。

「バラで10枚ください」

店員から受け取った宝くじを見つめながら、マサシはすでに少しだけ勝者の気分になっていた。

帰宅すると、マサシはすぐに机の前に座る。
宝くじを並べながら、スマホで当選金額の一覧を検索する。

「もし……一等だったら」

その瞬間、マサシの頭の中で壮大な未来が動き出した。

まずはタワーマンション。
高層階の窓から夜景が見える部屋。
ワイングラスを片手に、余裕の表情で夜景を眺める自分。

次に思い浮かぶのは、同級生の亮と好美だ。

「おい亮、久しぶり」

「ちょっと寿司でも行くか?」

二人を高級寿司屋に招待するマサシ。
カウンター席で板前が寿司を握る。

亮が驚いた顔で言う。

「マサシ……どうしたんだ?」

マサシは静かに笑う。

「いや、実はさ」

「投資でちょっと成功して」

余裕のドヤ顔。

好美は目を丸くする。

「えっ、すごい!」

亮も思わず言う。

「マサシ……すげぇな!」

マサシはワインを一口飲みながら、静かに言う。

「まあな」

そんな未来を想像しながら、マサシは一人でニヤニヤしていた。

気づけば時計は三時間も進んでいた。

妄想だけで、かなりの幸福感を味わってしまっている。

そしてついに――

当選番号発表の時間。

マサシはスマホを手に取り、宝くじの番号を一枚ずつ確認する。

「……」

「……」

「……あ」

画面には小さく表示されていた。

――結果:300円当選

当たったのは、たった一枚。
しかも300円。

マサシはしばらくその画面を見つめたあと、小さく息を吐いた。

「フン……」

「まあ、金で買える幸せなんて」

「どうせ薄っぺらいもんだしな」

完全に負け惜しみだった。

そのあとマサシはコンビニへ行き、当たった300円を使って発泡酒を一本買う。

部屋に戻り、缶を開ける。

「プシュッ」

一口飲んで、静かにつぶやく。

「……これが」

「現実的な投資だな」

部屋の中には、静かな夜の空気が流れていた。

【作者コメント】

宝くじを買うと、結果が出るまでの間に「あれを買おう」「仕事を辞めよう」など、つい夢を膨らませてしまいます。

実は、その妄想の時間こそが宝くじの一番の楽しさなのかもしれません。

今回のマサシは、当選金を受け取る前に、すでに人生を何周も先までシミュレーションしていました。

「投資だから」

という都合のいい理屈も、当たった後の成功者インタビューまで想像してしまうところも、どこか憎めないマサシらしさです。

結果は300円でしたが、数時間にわたって億万長者気分を味わえたのなら、それもある意味では”元が取れた”のかもしれません。

夢を見ることは悪くない。

でも最後はちゃんと現実に戻ってくる――そんなマサシらしい、笑いと少しの切なさを詰め込んだ一話になりました。