オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第8話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「親を安心させたい小さな嘘」です。
実家から届いた仕送り。
米やレトルト食品、果物、そして母からの短い手紙。
「ちゃんと食べてますか? 無理しないでね。」
たった一言ですが、その優しさがマサシの心にじんわりと染み渡ります。
そんな中でかかってきた母からの電話。
本当はコンビニのシフトリーダーなのに、
「今ちょっとデカいプロジェクト任されててさ」
と、少しだけ格好をつけてしまうマサシ。
決して自慢したいわけではなく、親に安心してほしいという気持ちから出た嘘だからこそ、どこか切なく、それでいて微笑ましく映ります。
電話を切った後、一人で梨をかじるシーンも印象的です。
「……甘いな」
その甘さは果物だけではなく、母親の愛情と、自分がついた小さな嘘への罪悪感が混ざり合った、何とも言えない味だったのでしょう。
そして翌朝。
少しだけ胸に引っ掛かりを残しながらも、
「親を安心させる嘘も、立派な親孝行だろ!」
と前向きに言い換えて出勤するマサシ。
笑いの中に家族愛を描いた、シリーズの中でも少し心温まる一話になっています。
【本文】
ある日の夕方、マサシの部屋に一つの段ボール箱が届いた。送り主は実家の母。
段ボールの側面には、母の見慣れた丸い字で「食べ物」と書かれている。
「また送ってきたのか…」
そう言いながらも、マサシは少し嬉しそうに箱を開けた。
中には、米の袋、レトルト食品、カップ麺、そしてリンゴや梨などの果物がぎっしり詰まっている。
どれも、母なりに「息子が困らないように」と考えて送ってくれたものだった。
箱の一番上には、手紙が一枚入っていた。
「マサシへ
ちゃんと食べてますか?
無理しないでね。
母より」
短い文章だったが、その優しい言葉にマサシは少しだけ照れくさそうな顔をする。
「……仕送り、ありがてぇな」
そんなことをつぶやいた瞬間、スマホが鳴った。
画面には「母」の文字。
「もしもし?」
電話に出ると、母の声が聞こえる。
「ああマサシ? 荷物届いた?」
「最近忙しいんじゃない?体は大丈夫?」
マサシは一瞬だけ言葉に詰まる。
そして、いつものように少しだけ背筋を伸ばす。
「ああ、まあな」
「今ちょっとデカいプロジェクト任されててさ」
本当はただのコンビニのシフトリーダーだ。
それでも、なんとなく「プロジェクト」という言葉に変換してしまう。
「そうなの?すごいじゃない」
母は素直に喜んだ。
「でも体には気をつけてね」
「無理しないで」
その優しい声を聞きながら、マサシは少しだけ胸が痛くなる。
電話を切ったあと、部屋は静かになった。
マサシは箱の中から梨を一つ取り出し、キッチンで皮もむかずにそのままかじる。
「シャクッ」
口いっぱいに広がる甘い果汁。
「……甘いな」
思わず小さくつぶやく。
その甘さは、梨の甘さだけではない気がした。
母の優しさ。
そして、少しだけの罪悪感。
マサシはしばらく黙ったまま梨を食べ続ける。
窓の外では夜の静かな街が広がっていた。
そして翌朝。
鏡の前で服を整えながら、マサシは小さくつぶやく。
「まぁ…親を安心させるための嘘ってのも」
「立派な親孝行だろ」
そう言って、自分に言い聞かせるように頷く。
「今日も社会(バイト)で輝くぜ!」
マサシはいつもの前向き変換を済ませ、部屋を出ていくのだった。
【作者コメント】
今回は、ギャグだけではなく、親子の距離感をテーマに描いてみました。
一人暮らしをしていると、実家から届く荷物や何気ない電話に救われることがあります。
そして多くの人が一度は、親に心配をかけたくなくて、
「仕事は順調だよ」
「元気だから大丈夫」
と、本当より少しだけ良く見せてしまった経験があるのではないでしょうか。
マサシの「デカいプロジェクト」という言葉も、見栄というより、母親を安心させたいという優しさから生まれた嘘です。
もちろん最後はいつものように自分を納得させていますが、その前向きさもまたマサシらしさ。
笑いだけではなく、家族の温かさや親への感謝を少し感じてもらえたら嬉しいです。


