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【サラリーマン奮闘記】第5話「強制飲み会と、凍結された経費」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「時代遅れの価値観」と「自業自得」です。

「俺の若い頃は」「今日は俺の奢りだ!」と豪快に振る舞う斎藤課長。しかし、その支払いに使おうとした会社のコーポレートカードは、まさかの利用停止。

実はタケルは事前に会社からの通知メールを確認しており、「本当にいいんですか?」とさりげなく忠告していました。それでも勢いを止めなかった課長が迎えた、128,000円という高額な”自己負担”。

最後に豪華な愛妻弁当がカップ麺へ変わるシーンは、笑えるようで少し切ない結末になっています。

「人の話を聞く大切さ」と「会社のルールを確認する重要性」を、コミカルに描いた一話です。

【本文】

「最近の若手は覇気がない!」
金曜日の夕方、フロアに響いたのは斎藤課長の怒鳴り声だった。

「今日は俺が鍛え直してやる!」

そう言うや否や、課長は半ば強引にチーム全員を連れ出す。
目的地は、駅前にあるそこそこ高級な和食店。木の看板に筆文字が書かれた、いかにも“接待向け”の店だった。

席につくなり斎藤は大きな声で宣言する。

「今日は無礼講だ!」

「俺の奢りだ!……まあ、会社の経費だけどな!」

そう言ってメニューを指差す。

「一番高い刺身盛り合わせだ!」
「この特選地酒も持ってこい!」
「あと伊勢海老の焼き物も!」

店員が驚くほどの勢いで注文を重ねていく斎藤。
ショウはすでに魂が抜けたような顔で相槌を打っていた。

「はぁ……そうなんですね……」

その間にも始まるのは、恒例の**「俺の若い頃は」シリーズ**。

「俺の若い頃はな!」
「朝まで働いてそのまま営業行ったもんだ!」

武勇伝は止まらない。
タケルはスマホをちらりと見ながら、黙って時間が過ぎるのを待っていた。

そして、気づけば2時間経過

テーブルの上には空いた酒瓶と、伊勢海老の殻の山。
斎藤は満足そうに腕を組む。

「よし、今日はこのへんでいいだろう」

そう言って店員にカードを差し出す。

「これで頼む」

会社の法人カード――いわゆるコーポレートカードだった。

しかし数分後。
店員が困惑した表情で戻ってくる。

「申し訳ございません……」

「こちらのカードですが……利用停止のエラーが出ておりまして」

「はあ!?」

斎藤が声を荒げる。

「何かの間違いだろ!」

しかし店員は申し訳なさそうに首を振る。

その時、タケルが静かに言った。

「課長……」

「今朝のメール、見てないんですか?」

斎藤が振り向く。

「メール?」

タケルはスマホの画面を見せる。

そこには社内通知。

『緊急経費削減通達』

内容はこうだった。

本日正午より、社内飲食に関する交際費の利用を全面凍結する。

斎藤の顔が固まる。

タケルは続けた。

「だから店に入る前に、僕……」

「“本当にいいんですか?”って聞きましたよね」

沈黙。

テーブルには、
高級酒の空瓶。
刺身の皿。
伊勢海老の殻。

そして店員が差し出す伝票。

128,000円。

斎藤は乾いた笑いを漏らす。

「……そ、そうだったかな……」

震える手で財布を取り出す。

中には個人のクレジットカード。

そして小さく呟く。

「……領収書は……」

「上様で……」

翌週。

会社の給湯室でタケルは気づいた。

これまで毎日持ってきていた斎藤課長の豪華な愛妻弁当が――

カップ麺に変わっている。

タケルは何も言わず、そっとコーヒーを飲む。

(……128,000円の味、ですか)

その光景を、静かに見守るのだった。

【作者コメント】

「俺の若い頃は」が始まると、つい時計を見てしまう……そんな経験をした方も少なくないのではないでしょうか(笑)。

今回の話は、勢いだけで行動すると後で大きな代償を払うことがある、という会社あるあるをテーマにしました。

特に最近は経費やコンプライアンスのルールが厳しくなっている会社も多く、「知らなかった」では済まされない場面も増えています。

それでも最後は、128,000円の領収書を前に肩を落とす課長を見て、「ちょっとかわいそうかも……」と思ってしまう方もいるかもしれません。

笑いながら読んでいただきつつ、「メールはちゃんと確認しよう」と思っていただけたら嬉しいです。