オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第15話
【前回のあらすじ】
佐藤に誘われ、副業の現場を見学したテツヤ。
過去の失敗から「副業=怪しいもの」という先入観を持っていたが、そこにあったのは、派手さとは無縁の地道な仕事だった。
甘い成功談も、一攫千金の話もない。ただ目の前の仕事を一つずつ積み重ねる人たちの姿を見て、テツヤは初めて「自分の目で確かめること」の大切さを知る。
そして、「試してみる」という、自分自身の意思で新しい一歩を踏み出した。
【今回の見どころ】
今回のテーマは「現実を知ること」です。
実際に副業を始めたテツヤを待っていたのは、想像以上に地味で時間のかかる毎日でした。思ったように進まず、報酬も少ない。それでも、自分で選んだ道だからこそ簡単には諦めたくない――そんな葛藤を通して、「続ける理由」を探し始めるテツヤの姿に注目してください。
【本文】
「……やってみるか」
そう決めたあの日から、テツヤの生活にもう一つの時間が増えた。
昼は工場。
夜はコンビニ。
そして、その合間に――副業。
最初は簡単な作業からだった。
文章の入力。
データの整理。
決められた内容をまとめるだけの仕事。
「これならできそうだな」
正直、そう思った。
難しいスキルは必要ない。
特別な知識もいらない。
ただ、やればいいだけ。
そう思っていた。
だが――
「……全然終わらないな」
気づけば、時計は深夜を回っていた。
画面に向かい続ける目は疲れ、指も重い。
同じ作業を繰り返しているはずなのに、思ったより進まない。
(こんなに時間かかるのか……)
想像していたよりも、ずっと地味で、ずっと大変だった。
次の日。
工場での作業中、体が重い。
明らかに寝不足だった。
「大丈夫か?」
同僚に声をかけられる。
「あ、大丈夫です」
そう答えるが、自分でも分かる。
全然大丈夫ではない。
その日の夜、コンビニの勤務中も集中力が続かなかった。
レジの操作を一瞬間違えそうになる。
(……これ、続くのか?)
頭の中に不安がよぎる。
だが、ここでやめるのは違う気がした。
(まだ始めたばかりだろ)
自分に言い聞かせる。
数日が経つ。
少しずつ作業には慣れてきた。
だが、それと同時に別の現実も見えてきた。
「……これだけ?」
初めての報酬。
金額は、想像よりもずっと少なかった。
あれだけ時間を使って、これだけ。
(割に合わないな……)
正直な感想だった。
だが、佐藤の言葉を思い出す。
「すぐには稼げないよ」
その通りだった。
むしろ、自分が甘く見ていたのかもしれない。
ある日の夜。
作業を終え、椅子にもたれかかる。
部屋は静かで、画面の光だけが浮かんでいる。
(……なんのためにやってるんだ)
ふと、そんな考えが浮かぶ。
疲れているからかもしれない。
だが、その問いは避けて通れなかった。
金のためか。
将来のためか。
それとも――
「……分かんねぇな」
小さくつぶやく。
まだ答えは出ていない。
でも一つだけ、はっきりしていることがあった。
(楽じゃない)
それだけは間違いなかった。
翌日。
休憩室で佐藤と顔を合わせる。
「どう?やってみて」
軽い口調。
テツヤは少しだけ考えてから答える。
「……思ってたより、きついですね」
正直に言う。
佐藤は笑う。
「だろ?」
その反応に、少しだけ力が抜ける。
「でもさ」
佐藤は続ける。
「それでもやるかどうかなんだよ」
シンプルな言葉だった。
でも、妙に重かった。
「やらない理由なんて、いくらでもある」
「でも、やる理由を一つでも持てるかどうか」
テツヤは黙って聞く。
(やる理由……)
まだはっきりとはない。
でも――
(やってる自分は嫌いじゃない)
その感覚はあった。
「……もう少しやってみます」
そう答える。
迷いはある。
でも、完全に否定もしていない。
それが今の自分だった。
帰り道。
夜の街を歩く。
体は疲れている。
でも、どこか前とは違う。
(楽じゃないって分かった)
それだけでも、意味がある気がした。
部屋に戻る。
ノートを開く。
「副業」という言葉の下に、書き足す。
「時間がかかる」
「地味」
「でも、ゼロじゃない」
ペンを止める。
しばらく考える。
そして、もう一行。
「続けるかは、自分次第」
小さく息を吐く。
まだ答えは出ていない。
でも――
やめる理由にも、続ける理由にも、ちゃんと向き合えている。
それだけで、少し前に進んでいる気がした。
「……まあ、もう少しだけやるか」
静かにつぶやく。
その言葉には、無理も勢いもなかった。
ただ、現実を見た上での選択だった。
【作者コメント】
第15話で描きたかったのは、「始めることよりも、続けることの方が難しい」という現実です。
新しいことを始める時、多くの人は結果ばかりを想像します。しかし実際に待っているのは、地味で単調な作業の積み重ねです。テツヤも、「簡単そう」という印象とは裏腹に、時間も体力も必要な現実を目の当たりにします。
それでも彼は、「思っていたのと違うからやめる」のではなく、「現実を知った上で、それでも続けるか」を考え始めました。この変化こそが、これまでのテツヤとの大きな違いです。
また、佐藤の「やらない理由はいくらでもある。でも、やる理由を一つでも持てるかどうか」という言葉は、この物語全体を通してのテーマの一つでもあります。
第15話は、大きな成功も劇的な展開もありません。しかし、自分で選んだ道の厳しさを知り、それでも歩みを止めなかったテツヤにとって、本当の意味で「継続する力」が育ち始めた、大切な一話となっています。


