オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第11話
【前回のあらすじ】
二次面接を終えたテツヤは、不安と期待が入り混じる日々を過ごしていた。
そして届いた知らせは、不採用でも合格でもなく、「最終面接への案内」という予想外の結果だった。
ここまで何度も失敗し、それでも立ち止まらずに挑戦を続けてきたテツヤ。気づけば、自分で考え、自分で選び、自分の足でここまで歩いてきた。
いよいよ迎える最後の面接。その先には、どんな答えが待っているのだろうか。
【今回の見どころ】
今回のテーマは「自分らしさ」です。
最終面接では、知識や経験だけでなく、「あなたはどんな人なのか」が問われます。テツヤは取り繕うことなく、自分の弱さも未熟さも受け入れた上で、自分の言葉で思いを伝えます。結果以上に、「自分を偽らなかった」という成長が描かれる一話です。
【本文】
最終面接の日が近づくにつれて、テツヤの中の空気は明らかに変わっていた。
これまで感じてきた緊張とは、どこか違う。
重い。
逃げ場がない。
(……ここで決まるのか)
そう思うと、自然と背筋が伸びる。
一次、二次と進んできた。
それだけでも十分に大きな変化だった。
だが今回は違う。
“選ばれるかどうか”が、はっきりと問われる場。
それが最終面接だった。
工場での作業中も、コンビニの夜勤中も、頭の中では何度もシミュレーションを繰り返す。
(何を聞かれる)
(どう答える)
(自分は何を伝えたい)
考えて、迷って、また考える。
ノートにはびっしりと文字が並んでいた。
これまでの振り返り。
自分の弱さ。
それでも変わろうとした理由。
どれも綺麗な言葉ではない。
でも、確実に「自分の言葉」だった。
ある夜。
部屋でノートを見返していると、ふと手が止まる。
(……これでいいのか?)
完璧ではない。
むしろ、不安の方が大きい。
だが同時に、ある感覚もあった。
(……これ以上は、作れないな)
取り繕うことはできる。
もっと“それっぽい答え”も作れる。
でも、それでは意味がない気がした。
ここまで来たのは、「自分で考えてきたから」だ。
なら――
(最後も、それでいくか)
小さく息を吐く。
覚悟に近い感情だった。
面接当日。
スーツに袖を通す手は、これまでで一番落ち着いていた。
緊張がないわけではない。
むしろ、強い。
それでも、不思議と逃げたいとは思わなかった。
玄関の鏡の前に立つ。
少しだけ疲れた顔。
でも、その奥にある目は、以前とは明らかに違っていた。
「……行くか」
静かに言い、ドアを開ける。
会場に着く。
受付を済ませ、待合室へ。
静かな空間。
時計の音だけがやけに響く。
(……ここまで来たな)
ふと、これまでのことが頭をよぎる。
何も考えていなかった日々。
副業で失敗したこと。
面接で何も言えなかった自分。
そこから、ここまで来た。
それだけで、少しだけ自信になった。
名前を呼ばれる。
立ち上がる。
ドアの前に立つ。
(……逃げるなよ)
心の中で、いつもの言葉をつぶやく。
ノックをする。
「どうぞ」
扉を開ける。
最終面接が始まる。
部屋の空気は、これまでとは違っていた。
面接官は二人。
静かで、無駄のない視線。
「よろしくお願いします」
挨拶をして、席に座る。
すぐに質問が始まる。
「これまでの選考を通して、当社を志望する理由は何ですか?」
準備してきた質問。
だが、最終面接では“深さ”が問われる。
テツヤは一瞬だけ間を置く。
(……そのまま話す)
ゆっくりと口を開く。
考えてきたこと。
感じたこと。
取り繕わず、そのまま言葉にする。
途中で詰まる。
言い直す。
それでも、止まらない。
次の質問。
「あなたを採用するメリットは何ですか?」
強い質問だった。
一瞬、言葉に詰まる。
(……メリットか)
これまでの自分には、胸を張って言えるものはなかった。
でも――
(今の自分なら)
小さく息を吸う。
「……正直に言うと、特別なスキルはありません」
はっきりと言う。
面接官の表情がわずかに動く。
「ですが、ここまでの選考で、自分なりに考えて行動してきました」
言葉を続ける。
「逃げずに続けてきたことは、これからも続けられると思っています」
静かな声。
でも、それは自分の中から出てきた言葉だった。
沈黙が流れる。
短いはずなのに、長く感じる。
やがて、面接官の一人が小さく頷く。
その反応の意味は分からない。
それでも、テツヤの中には一つの感覚があった。
(……出し切った)
面接が終わる。
「本日はありがとうございました」
頭を下げる。
ドアを出る。
廊下に出た瞬間、全身の力が抜ける。
「……はぁ」
深く息を吐く。
結果は分からない。
受かるかもしれないし、落ちるかもしれない。
でも――
(もういいか)
そう思えた。
ここまで来て、初めてだった。
「結果よりも、やったこと」が残っている。
それが、何より大きかった。
外に出る。
空は少し曇っていた。
でも、どこか明るく感じる。
「……悪くないな」
小さくつぶやく。
テツヤはゆっくりと歩き出す。
答えはまだ出ていない。
それでも、確実に言えることが一つあった。
もう、あの頃の自分ではない。
【作者コメント】
第11話で描きたかったのは、「最後に問われるのは、自分自身である」ということです。
最終面接では、テツヤは自分を大きく見せようとはしませんでした。「特別なスキルはありません」と正直に認めた上で、それでも「考え続け、逃げずに行動してきたこと」を自分の強みとして伝えました。
この言葉は、物語を通して積み重ねてきた経験があったからこそ生まれた、本物の言葉です。何度も失敗し、遠回りをしながらも、自分と向き合い続けた時間が、テツヤを少しずつ成長させてきました。
人生では、努力しても望む結果にならないことがあります。しかし、自分のすべてを出し切れた経験は、決して無駄にはなりません。
第11話は、テツヤが「評価されるための人」ではなく、「自分らしく生きる人」へと変わった節目の回です。
そして次回、第12話では、この長い挑戦に一つの答えが示されます。その答えは決して思い描いたものではありませんが、テツヤの人生を大きく変える、本当の始まりとなっていきます。


