オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第1話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「家庭内ルール」と「父親の立場」です。
夜中に眠気まなこでトイレへ向かったパパ。しかし、何気なく便座を上げたままにしたことで、娘・優子の怒りに火をつけてしまいます。
「何度言ったら分かるの?」という一言から始まるまさかの説教。そして翌日には、便座がガムテープで固定されるという前代未聞の”座りション強制制度”が発足します。
悪気はないのに責められ、反論する間もなく新ルールが決定されるパパの姿には、思わず「あるある!」と共感してしまう方も多いのではないでしょうか。
笑いの中にも、家庭では父親が意外と弱い立場になることや、家族が快適に暮らすためのルールづくりをコミカルに描いた、シリーズの幕開けにふさわしい一話です。
【本文】
静まり返った夜中。
家族が寝静まる中、父は眠そうに目をこすりながらトイレへ向かっていた。
「ふぁぁ……夜中のトイレは眠い……」
半分寝ぼけた状態で用を足し、特に何も気にすることなく部屋へ戻ろうとする父。
しかしその瞬間、背後から低く冷たい声が響いた。
「あなた……また便座を上げっぱなしですね……?」
振り返った父の目に映ったのは、怒りのオーラをまとった娘・優子の姿だった。
あまりの迫力に、父は思わず体を震わせる。
「ひっ!」
優子はゆっくりとトイレのドアを開け、中を確認する。
そして深くため息をつくと、呆れたように言い放った。
「何回言えば分かるの? 便座は下げるって。」
父は慌てて弁解する。
「いや、ちょっと忘れただけで……悪気はないんだよ。」
しかしその言葉は、優子の怒りの火に油を注ぐだけだった。
「“ちょっと”じゃないの。これは家族への迷惑なの。」
優子は腕を組み、父を真っ直ぐに睨みつける。
そして次の瞬間、父の目に信じられない光景が飛び込んできた。
「えっ!? な、なんだこれ!?」
便座が――
ガムテープでガチガチに固定されていたのだ。
父は慌てて便座を持ち上げようとするが、びくともしない。
「な、なんだこれ!? ガムテープで固定されてる!?」
驚く父をよそに、優子はどこか満足そうな表情で言い放つ。
「あら奇運ね。」
そしてゆっくりと宣言する。
「今日から我が家は『座りション強制』になったのよ。」
あまりにも突然のルール変更に、父は言葉を失う。
「えっ!? そんなの聞いてないぞ!」
だが優子はまったく動じない。
「何度も注意したわよね?
それでも直らないなら、制度で解決するしかないでしょ。」
家族会議など存在しない。
この家のルールは、すでに決定していた。
父は肩を落とし、ただ小さくうなずくしかなかった。
「……はい(涙)」
こうして父は、男としての最後の砦であった“立ちション権”を失う。
そして家庭内ヒエラルキーの中で、静かに最下層へと転落していくのであった。
しかし――
これは父と娘の間で繰り広げられる、数々の家庭内ルールと理不尽な制裁の物語の、ほんの序章に過ぎない。
今日もまた、どこかの家庭で起きているかもしれない。
【作者コメント】
「便座を下げるか、下げないか」。
たったそれだけのことなのに、家庭では意外と大きな問題になることがあります。
今回の主人公・パパは、「悪気はなかった」「つい忘れただけ」と思っていますが、一緒に暮らす家族にとっては、毎日の積み重ねがストレスになることもあります。
もちろん、この作品は少し大げさに描いています(笑)。
便座をガムテープで固定する家庭は、さすがにほとんどないと思いますが、「何度言っても直らないから、最終手段に出る」という気持ちには共感する方もいるかもしれません。
この『不屈な父親奮闘記』は、そんな家庭で起こる小さな事件を、笑いに変えてお届けするシリーズです。
理不尽に見えることも、父親目線で見れば切実な問題。でも家族目線で見ると、「それはパパが悪いよ」と思ってしまう――そんな絶妙なバランスを楽しんでいただけたら嬉しいです。
そして、この便座事件は、まだ始まりに過ぎません。
これからも、家族のために奮闘しながら、ときには理不尽な仕打ちにも負けず、前向きに生きるパパの日常を、温かく見守っていただければ幸いです。


