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【サラリーマン奮闘記】第13話「360度評価の罠(優しさという名の恐怖)」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「評価はお願いするものではなく、積み重ねるもの。」です。

これまでシステムに何度も敗れてきた斎藤課長。

今度こそ学んだかと思いきや、まさかの”作戦変更”。

高級栄養ドリンクに有名店のケーキ、さらには「お前たちの成長を第一に考えている」という優しい言葉まで飛び出します。

しかし、あまりにも急な優しさに、タケルとショウは逆に警戒。

「絶対に裏がある。」

この一言だけで、読者にもオチの気配が伝わります。

そして明らかになる真相。

会社に導入された360度評価制度。

査定やボーナスに直結する制度と知った課長は、評価を上げるどころか、

「オール5で評価しろ。」

「匿名でも誰が書いたか分かる。」

という、まさかの評価強要を開始します。

ここでタケルが見つけたのが、

「証拠資料添付可能」

という一文。

評価は指示どおりオール5。

しかし、その横には”評価強要メモ”を証拠として添付。

「指示通り評価しました。」

というコメントが、この回最大の見どころです。

言われたことは守っている。

しかし、その”言われたこと”自体が証拠になってしまうという、見事なカウンター。

最後は総務・ミユキによる

「評価の強要およびパワーハラスメントが確認されました。」

という冷静な一言で完全決着。

「添付機能なんてあったのかぁぁ!」

と叫びながら連行される課長は、今回も自分で掘った穴に見事にはまってしまいました。

そして胃薬を飲みながら、

「評価はちゃんと5にしましたよ、課長。」

と心の中でつぶやくタケル。

皮肉の効いたラストが、このシリーズらしい締めくくりになっています。

【本文】

これまで「休日LINE残業」や「電子決裁」など、ことごとくシステムに敗北してきた斎藤課長。さすがに今回は少しは大人しくなるかと思われた――が、その予想はあっさり裏切られる。

ある日の朝。

「タケル、ショウ! いつもご苦労さん!」

満面の笑みで現れた課長は、なんと高級栄養ドリンクと有名店のケーキを差し入れてきたのだった。さらに、「俺はいつもお前たちの成長を第一に考えてるからな!」と、これまで聞いたことのない優しい言葉まで口にする。

突然の変貌に、タケルとショウは顔を見合わせる。

(……おかしい)

(絶対に裏がある)

むしろ優しすぎて怖い。タケルの胃はすでにじんわりと痛み始めていた。

その違和感の正体は、午後すぐに明らかになる。

総務のミユキから、全社員へ通達が出されたのだ。

『本年度より、部下が上司を匿名で評価する【360度評価システム】を導入します』

評価結果は、そのままボーナスや査定に直結する重要な制度だった。

「……なるほど」

タケルは静かに理解する。

あの不自然な優しさは、すべて点数稼ぎだったのだ。

その日の休憩時間、課長はタケルとショウを給湯室に呼び出す。

そして周囲を確認すると、こっそり一枚の紙を差し出した。

そこには手書きでこう書かれていた。

・評価はオール5にすること
・「常に部下思いである」と記載すること
・匿名でもIPアドレスで誰が書いたか分かる(※完全な嘘)

完全に脅迫である。

「分かってるな?」

ニヤリと笑う課長。

「お前たちの評価は、この俺が握ってるんだぞ」

その言葉に、ショウは顔を引きつらせる。タケルは何も言わず、ただ静かに頷いた。

席に戻ったタケルは、PCで評価システムを開く。

(……従うしかないのか……?)

画面には「評価入力フォーム」が表示されている。

評価:5

コメント欄:――

そのとき、タケルの目に一文が飛び込んできた。

『※評価の客観性確保のため、証拠資料があれば添付可能』

タケルの思考が一瞬止まる。

そして――

ピコーン。

何かがつながった。

タケルは無言で席を立ち、複合機へ向かう。

先ほどの「評価強要メモ」を取り出し、丁寧にセット。

カラー、高解像度。

ウィーン……

スキャン完了。

席に戻り、そのデータを評価システムの添付欄にドラッグする。

そして入力欄には、淡々とこう打ち込んだ。

評価:5
コメント:「指示通り評価しました」

最後に、送信ボタンを押す。

ターンッ。

数日後。

フロアに、重い空気が流れる。

総務部長とミユキが、斎藤課長の前に立っていた。

「斎藤課長」

「あなたの評価自体は“オール5”でした」

課長の顔が一瞬ほころぶ。

しかし、次の瞬間。

「ただし、添付されていた証拠資料により」

「評価の強要およびパワーハラスメントが確認されました」

空気が凍る。

「至急、人事部へ来てください」

「なっ……!? そ、そんな……!」

課長の顔は一気に青ざめる。

「あんなシステムに添付機能なんてあったのかぁぁ!」

そのまま連行されていく課長。

フロアには静寂が戻る。

タケルはゆっくりと引き出しを開け、いつもの胃薬を取り出す。

水で流し込み、静かに息を吐く。

(評価は……ちゃんと5にしましたよ、課長)

胃の痛みは消えない。

だが確かに、また一つ。

小さな勝利がそこにあった。

【作者コメント】

今回は、多くの会社で導入が進んでいる「360度評価制度」をテーマにしました。

360度評価は、上司だけでなく部下や同僚など、さまざまな立場から評価を受けることで、公平性や客観性を高めることを目的とした制度です。

しかし、その制度も運用を誤れば、本来の目的から外れてしまいます。

今回の斎藤課長は、評価を”普段の行動”で積み重ねるのではなく、直前だけ優しく振る舞い、さらには評価を強要しようとしました。

評価はお願いしたり、脅したりして得るものではありません。

日々の言動や信頼の積み重ねがあってこそ、本当の評価につながるものだと思います。

一方、タケルは今回も感情的に反発することなく、制度のルールを正しく活用して問題を解決しました。

オール5という評価自体は指示どおり。

しかし、その評価がどのような経緯で付けられたのかを証拠とともに伝えたことで、制度本来の目的が機能したのです。

今回描いた内容はコメディですが、「評価制度は正しく運用されてこそ意味がある」というメッセージも込めています。

これからも『サラリーマン奮闘記』では、職場で起こりそうな出来事を笑いに変えながら、働く人なら思わず「あるある」と頷いてしまう作品を描いていきます。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回も、斎藤課長とタケルが繰り広げる”小さな攻防”を、ぜひお楽しみください。