【不屈な父親奮闘記】第20話「釣り名人」

オリジナルマンガ

休日の朝。家族は海辺の釣り公園にやってきた。
今日はパパが前々から楽しみにしていた「家族釣り大会」である。

帽子にベスト、そして新品同様の高級そうな釣り竿とリールを構えたパパは、まるでベテラン釣り師のような風格を漂わせながら海を指差した。

「いいか、今夜のおかずはパパが釣る新鮮な魚だ。
刺身にして船盛りにしてやるぞ!」

その自信満々の宣言に、子供たちは少しだけ期待した顔を見せる。
ママも「本当に釣れるの?」と半信半疑ながら見守っていた。

しかし――

時間だけが静かに流れていく。

竿先はまったく動かない。

波の音だけが静かに聞こえる中、パパは微動だにせず海を見つめ続けている。

そして二時間後。

子供たちはすっかり飽きてしまい、持ってきたお菓子を食べながらクーラーボックスに腰掛けていた。

「まだー?」

「お腹すいたー」

そんな声が聞こえても、パパは竿を握ったまま動かない。

日差しに照らされ、顔はほんのり赤く日焼けしている。

「焦るな。
これからが“時合い”ってやつだ。」

釣り人らしい言葉でなんとか威厳を保とうとするパパ。

だがその時――

竿が突然、大きくしなった。

グググッ……!

「来たッ!!」

パパの目が一気に輝く。

「これは大物だぞ!」

必死にリールを巻き始めるパパ。
竿は大きく曲がり、海の中から確かな手応えが伝わってくる。

子供たちも思わず立ち上がる。

「すごい!」

「パパ、がんばれ!」

家族の視線が一斉に集まる中、パパは汗だくになりながらリールを巻き続ける。

「よし……あと少しだ……!」

そしてついに、水面から姿を現した“獲物”。

――それは。

ぐっしょりと水を吸った長靴と、絡みついた大量の海藻だった。

「……」

その場の空気が一瞬で凍りつく。

パパは無言で長靴を持ち上げた。

ぽたぽたと海水が滴り落ちる。

「あ……長靴と……海藻……」

誰も何も言わない。

夕方、釣りは静かに終了した。

その日の夜。

食卓には豪華な刺身の盛り合わせが並んでいた。

しかしそのパックには、しっかりと貼られている。

「半額」の赤いシール。

「スーパーの刺身、美味しいわね。」

家族が楽しそうに箸を進める中、パパは静かに醤油をつけながら刺身を口に運ぶ。

そして小さくつぶやいた。

「……今日は潮が悪かったな。」

こうしてまた一つ、
自称“釣り名人”の伝説だけが静かに海へ流れていくのだった。