PR

【不屈な父親奮闘記】第19話「秘密の抜け道」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「秘密の抜け道」です。

高速道路の大渋滞に巻き込まれた一家を救おうと、「俺だけが知ってる秘密の抜け道がある!」と自信満々にハンドルを切るパパ。

ところが進めば進むほど道は細くなり、草木が車をかすめる不安な山道へ。家族の表情が少しずつ曇っていく中、それでも「もうすぐ抜ける」と言い続けるパパの姿が何とも微笑ましく描かれています。

そして、ようやくたどり着いた先に待っていたのは、広大な田んぼと一本の案山子。まさかの行き止まりという結末には、思わず吹き出してしまいます。

最後は何事もなかったかのように渋滞へ戻るものの、出発した時よりも長くなった渋滞と、車内を包む重たい沈黙……。パパの「秘密の抜け道」が、家族にとって忘れられない思い出になった一話です。

【本文】

休日の午後。
家族で出かけた帰り道、車は高速道路の出口付近で大渋滞に巻き込まれてしまった。

前も後ろも車、車、車。
まったく進む気配がない。

「これじゃ、いつ着くかわからないわね……」

助手席でため息をつく母。
後部座席では娘も退屈そうに窓の外を眺めている。

その空気を変えようと、父が突然胸を張った。

「任せろ。」

ハンドルを握りながら、どこか誇らしげな表情を浮かべる。

「俺だけが知ってる秘密の抜け道があるんだ。」

家族は少し半信半疑だったが、渋滞の中で待つよりはマシだと思い、父の判断に任せることにした。

父はウインカーを出し、車を脇道へと進ませる。

「ほらな、こっちならすぐ抜けられる。」

しかしその道は、進むにつれて徐々に様子が変わっていった。

最初は普通の裏道だったはずなのに、
気づけば道幅はどんどん狭くなり、左右には草木が生い茂っている。

「す、少し狭い道だが……すぐ抜けるはずだ。」

父は強がるように言うが、額にはうっすらと汗がにじんでいた。

ガタゴト、ガタゴト。

舗装も途切れ、車は揺れながら進んでいく。

後部座席の娘が小さくつぶやく。

「本当に……こっちで合ってるの?」

助手席の母も不安そうに周囲を見回す。

「なんだか、山道みたいだけど……」

それでも父は引き返さない。

「大丈夫だ。
抜ければすぐだ……!」

しかしその直後、視界がぱっと開けた。

「お、抜けた!」

父は少し安心した表情を見せる。

だが――

そこに広がっていたのは、広い田んぼの真ん中。
そしてその先には、ぽつんと立つ一本の案山子。

道は、そこで完全に途切れていた。

車内に静寂が流れる。

「……あ。」

父が小さくつぶやく。

誰も何も言わない。

しばらくして、父は静かにハンドルを切った。

そして元の道へ戻るころには、空はすっかり夕暮れ色になっていた。

しかし――

渋滞は、まだ続いていた。

むしろ先ほどより長い列になっているようにも見える。

車内には重たい空気が流れていた。

後部座席の娘は黙ったまま窓の外を見つめ、
助手席の母も何も言わない。

その無言の圧力の中で、父は小さくなりながらハンドルを握っていた。

「……結局、戻ってきた……」

こうして父の“秘密の抜け道”は、
家族の記憶に残る遠回りの伝説として静かに刻まれることになった。

今日もまたこの家では、
父の自信満々の作戦が、静かに迷子になっていくのである。

【作者コメント】

渋滞にはまると、「こっちの道なら早いかもしれない」と思ったことはありませんか?

今回のパパは、その自信が少し強すぎたようです(笑)。

カーナビよりも自分の記憶を信じて進んだ結果、たどり着いたのは田んぼの真ん中。本人は家族を早く目的地へ連れて行こうとしただけなのですが、その善意が思わぬ遠回りになってしまいました。

それでも、家族旅行というのは不思議なもので、目的地までのハプニングこそが後になって一番笑える思い出になったりします。

「あの時、案山子の前でみんな黙っちゃったよね。」

そんな何気ない失敗話が、何年経っても家族の会話に登場するのかもしれません。

次回も、不器用だけれど家族のために一生懸命頑張るパパの奮闘を、ぜひお楽しみください。