【フリーター奮闘記】第10話 『風邪と孤独と時給』

オリジナルマンガ

季節の変わり目。
昼と夜の気温差が大きくなった頃、マサシは突然の高熱でダウンしてしまった。

ワンルームの部屋のベッド。
額には冷えピタ。
体温計は38度台を示している。

「うぅ……季節の変わり目か……」

マサシはぼんやりした頭で天井を見上げる。

部屋の中には、飲みかけのスポーツドリンクの空ボトルと、丸めたティッシュが散らばっていた。

「ポカリも……切れた……」

体は重く、起き上がる気力もない。

もし会社員だったら、病欠でも多少の保障はあるのかもしれない。
しかしマサシはアルバイト。

休めば、その日の給料はゼロ。
当然、有給休暇などという制度は存在しない。

「休んだら……その分、収入ゼロか……」

ぼんやりとした頭で計算しながら、マサシは天井のシミを眺める。

やることがない。
ただ時間だけがゆっくり流れていく。

ふとスマホを手に取る。

通知は――ゼロ。

LINEもメールも何もない。

マサシは画面を見つめながら、小さくつぶやく。

「……みんな働いてる時間か」

亮は会社で会議をしている頃だろう。
好美も職場で忙しく働いているはずだ。

社会はちゃんと動いている。

その中で――

「世界から俺だけ切り離されたみたいだな……」

そんな感覚が胸に広がる。

一人暮らしの部屋は、やけに静かだった。

それから一日ほど経ち、ようやく熱が下がった。

翌朝、マサシはゆっくりと体を起こす。

まだ少しフラフラするが、体調はだいぶ戻っていた。

「……よし」

鏡の前に立ち、顔を見つめる。

そして拳を握る。

「健康こそが最大の資本だな!」

いつもの“前向き変換”が発動する。

「体を休めた分、パワーも回復した!」

「今日からまた社会(バイト)で戦える!」

しかし次の瞬間、カレンダーを見て現実に気づく。

「……あ」

休んだ分のシフト。
当然、給料は減る。

「……ヤバい」

マサシは慌ててスマホを取り、店長にメッセージを送る。

――シフト、追加できますか?

数分後、返信が来た。

「今週ちょっと忙しいから助かる!」

結果――

連勤確定。

マサシは少し青ざめながら制服を着る。

「健康は大事だ……」

「でも生活費も大事だ……」

そうつぶやきながら、マサシは今日もコンビニへ向かうのだった。