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【サラリーマン奮闘記】第23話「成果主義の罠」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「”やったふり”は、AIには通用しない。」です。

成果主義の導入に合わせて、新たに稼働した「AI貢献度分析システム」。作業時間や実装量、レビュー対応などのログをもとに、プロジェクトへの貢献度を数値化するという、まさに”事実で評価する”ためのシステムです。

そんな中、プロジェクトの最終報告会で斎藤課長はいつものように堂々と登壇します。

「今回の成功は、私の緻密なマネジメントのおかげです!」

さらに、

「寝る間を惜しんで貢献しました!」

と胸を張る姿に、マサシは

「……計画段階で、いなくなってほしかった。」

と心の中で静かにツッコミを入れます。

今回の見どころは、”見せかけの成果”と”実際の成果”の対比です。

会議では存在感や話し方で評価されがちな斎藤課長。しかし、AIは肩書きや声の大きさではなく、残されたログだけを見ます。

マサシは感情を挟まず、システムに蓄積されたデータをそのままスクリーンへ出力。

すると画面には、

「AI判定:真の貢献者=マサシ」

という結果が大きく表示されます。

一方で、

「課長=会議参加のみ」

という、あまりにもシンプルな評価も映し出され、会議室は静まり返ります。

そして極めつけは、斎藤課長の

「AIの誤診です!」

という必死の反論。

しかし役員から返ってきたのは、

「ログは改ざんできない。データがすべてだ。」

という一言でした。

最後に胃薬を飲みながら、

「AIの前では、“やったふり”は通用しない。」

と静かにつぶやくマサシの姿が、本シリーズらしい余韻を残しています。

【本文】

社内で「成果主義」が本格的に推進され始めた今期。
その象徴として導入されたのが、プロジェクトメンバーの働きを数値化する『AI貢献度分析システム』だった。

作業ログ、コードのコミット数、ドキュメント作成量、さらにはレビュー対応時間までを自動で集計し、「誰がどれだけ貢献したのか」を可視化する。
曖昧だった評価を排除し、“本当に働いた人間”が正当に報われる――そんな触れ込みの最新ツールである。

「ついに来たか……」

マサシは、画面に表示された分析項目を見つめながら小さく呟く。
その目には、わずかな期待と、そして諦めが混じっていた。

(……どうせ最後は、空気で決まるんだろうな……)

迎えたのは、大型案件「プロジェクト・エクリプス」の最終報告会。
役員がずらりと並ぶ重苦しい会議室の中央で、斎藤課長が堂々と立ち上がる。

「役員の皆様!」

いつもの大きな声。

「今回のプロジェクト成功は、私の緻密なマネジメントの賜物です!」

スクリーンには、整えられた資料と“それっぽい成果グラフ”。
その横で、課長はさらに続ける。

「寝る間を惜しんで現場を統括し、全体最適を追求しました!」

(……寝てたのは、現場じゃなくて会議中だろ……)

マサシは心の中で淡々とツッコミを入れる。

実際のところ、設計、実装、トラブル対応、すべてを回していたのはマサシ一人だった。
課長は進捗会議に顔を出し、曖昧な指示を出すだけ。
だが、その“存在感”だけで評価が上書きされていくのが、この会社の常だった。

「さすが課長ですね……」

周囲からも、いつもの忖度が飛ぶ。

(……また、同じか……)

その瞬間、マサシは静かにPCを開いた。

画面には、まだ誰も使っていない『AI貢献度分析システム』のレポート作成画面。

そこにはすでに、すべてのログが揃っていた。

・作業時間:マサシ 148時間
・実装コード数:マサシ 12,000行
・レビュー対応:マサシ 98%
・課長:会議参加ログのみ

「……明らかだな」

無表情のまま、マサシは操作を進める。

忖度なし。
加工なし。
ただ、事実だけをそのまま。

そして――

会議室の巨大スクリーンへの出力設定をONにする。

一瞬だけ、手が止まる。

(……いいのか?)

だが、次の瞬間には迷いは消えていた。

ターンッ!

エンターキーが押し込まれる。

――数秒後。

斎藤課長の背後のスクリーンが、突如赤くフラッシュする。

ざわめく会議室。

そして、表示される。

『AI判定:真の貢献者=マサシ
(作業時間・実装コード数・対応量で圧倒的)
課長=会議参加のみ』

静寂。

一拍遅れて、空気が凍る。

「……は?」

役員の一人が低く呟く。

「斎藤……これはどういうことだ」

鋭い視線が突き刺さる。

「い、いや!これはAIの誤判定で……!」

狼狽する課長。

「誤診です!データの解釈が間違っている!」

だが、別の役員が静かに言う。

「ログは改ざんできない」

「……データが、すべてだ」

その一言で、空気は決まった。

先ほどまで持ち上げていた同僚たちも、一斉に沈黙する。

誰も助けない。

いや、助けられない。

「な、なんでこんな空気読めない結果を出すんだぁぁ!!」

崩れ落ちる斎藤課長。

その姿を、マサシは静かに見つめていた。

(……AIの前では、“やったふり”は通用しない)

ポケットから胃薬を取り出し、水で流し込む。

ふと視線を上げると、役員たちがこちらを見ている。

その視線には、初めて“評価”というものが含まれていた。

だがマサシは、何も言わない。

ただ静かに、PCを閉じる。

こうしてまた一つ――

誰にも気づかれない形で、
しかし確実に現実を変えた“事実”が刻まれた。

それは、声を上げることなく勝ち取った――

小さくて、確かな勝利だった。

【作者コメント】

今回は、「成果は、声の大きさではなく積み重ねで決まる」というテーマで描きました。

職場では、ときに「実際に手を動かした人」よりも、「うまく説明した人」が評価されることがあります。

もちろん、マネジメントや調整も重要な仕事です。しかし、それを理由に現場で努力した人の成果まで見えなくなってしまうと、組織全体のモチベーションは下がってしまいます。

そこで今回登場したのが、AI貢献度分析システムです。

作品では、作業ログやレビュー対応などを総合的に分析し、貢献度を可視化するという演出にしています。実際のAIがここまで単純に「真の貢献者」を断定するわけではありませんが、近年はプロジェクト管理ツールや開発ツールのログを活用して、業務の見える化が進んでいることをヒントに描いています。

今回描きたかったのは、

「AIが人を評価すること」ではなく、「記録された事実が、曖昧だった評価を補うことがある」

という点です。

マサシは今回も誰かを責めたり、自分の功績を主張したりはしませんでした。

ただ、積み重ねられたデータを、そのまま表示しただけ。

だからこそ、最後に役員たちがマサシへ向けた視線には、初めて”本当の評価”が宿りました。

『サラリーマン奮闘記』では、

「努力は、すぐには報われなくても、消えるものではない。」

というメッセージを、コミカルな職場風景の中に込めています。

今回もまた、マサシは静かに胃薬を飲みながら、小さく、しかし確かな勝利を積み重ねました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回も、AIや最新システムと人間らしい職場の”あるある”が交差するエピソードを、笑いと少しの風刺を添えてお届けします。