オリジナルWeb漫画:サラリーマン奮闘記シリーズ 第19話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「見える化は、嘘よりも事実を映し出す。」です。
固定席がなくなり、スマート名札によって社員の居場所がリアルタイムで可視化される最新システムが導入されたオフィス。
便利な仕組みにもかかわらず、斎藤課長はさっそく抜け道を探します。
「名札だけ置いとけば、俺は仕事してることになる」
という発想は、いかにも課長らしい短絡的な作戦。
しかし今回の見どころは、その”偽装”をマサシがあえて正面から否定せず、システムの仕組みを理解したうえで静かに行動するところです。
名札が置かれた場所は、まさかの「次期役員人事会議」の開催される第一役員会議室の前。
結果として、
極秘会議への不審な滞在
情報漏えいの疑い
という、想像以上に重大な事態へ発展してしまいます。
そして最大の見どころは、
「では、どこにいたんですか?」
という一言に対し、
「地下の喫茶店でサボって……あっ」
と、自ら真実を口にしてしまう”自爆”の瞬間。
言い逃れしようとした結果、自分で退路を断ってしまう展開は、本シリーズならではの痛快なオチです。
最後にマサシが
「見える化って、怖いな」
と静かにつぶやく場面も、システムそのものではなく、使い方次第で自分自身が証拠を残してしまうことを象徴する印象的な締めくくりになっています。
【本文】
今月、オフィスは大きな変化を迎えていた。固定席が廃止され、完全フリーアドレス制へ移行。そして同時に導入されたのが、「社内位置情報システム」。社員全員が身につけるスマート名札型ビーコンにより、誰が今どこにいるのかが、専用アプリ上でリアルタイムに可視化されるというものだった。
「これで無駄な探し回りがなくなりますね」
総務のミユキは淡々と説明するが、その裏にある“監視機能”に、社員たちは内心ざわついていた。
そんな中、当然のようにこのシステムを“回避”しようとする人物が一人。
斎藤課長である。
「タケル……いや、今日はマサシだな」
ニヤリと笑いながら、首から下げたスマート名札を外すと、マサシに押し付ける。
「俺はちょっと地下の喫茶店で“戦略的休憩”だ。この名札、お前のデスクの横にでも置いとけ。これで俺は“仕事中”に見える」
堂々たるサボり宣言に、マサシの胃が静かに痛み出す。
(……位置情報の偽装を部下にやらせる上司って何なんだ……)
だがマサシは何も言わない。無表情のまま名札を受け取り、静かに立ち上がる。
(……システムは、正しく使うべきだよな……)
そう心の中でつぶやきながら、向かった先は――最上階。
そこではちょうど、「次期役員人事」に関する極秘会議が行われていた。
重厚な扉の前に立つマサシ。
一瞬だけ周囲を確認し、そっと斎藤課長の名札をドアノブに引っ掛ける。
「……これでいい」
カチャリ、と小さな音を立てて、偽装は完了した。
数時間後。
地下の喫茶店でゆっくりと時間を潰していた斎藤課長が、満足げにオフィスへ戻ってくる。
「ふぅ……有意義な戦略的休憩だったな」
しかし、その足取りは途中で止まる。
フロアの中央で、部長とミユキが仁王立ちしていた。
「斎藤課長」
静かだが、逃げ場のない声。
「システム上、あなたは本日3時間にわたり――」
ミユキがタブレットを掲げる。
「第一役員会議室のドア前に滞在していたことになっています」
空気が凍る。
「極秘会議の盗み聞き、あるいは内部情報の不正取得……その疑いがありますが?」
斎藤課長の顔が一瞬で青ざめる。
「ち、違う! 俺はそんなところにいない!」
必死に否定するが、さらに追い打ち。
「では、どこに?」
その問いに、反射的に口が動いてしまう。
「地下の喫茶店でサボって……あっ」
言った瞬間、自分で気づく。
完全な“自爆”だった。
場の空気が一段と冷え込む。
部長は深いため息をつき、静かに言う。
「……どちらにしてもアウトだな」
言い逃れは、もうできない。
連行されていく斎藤課長の背中を見送りながら、マサシは静かに席へ戻る。
引き出しからいつもの胃薬を取り出し、水で流し込む。
(……見える化って、怖いな)
そう思いながらも、その表情はどこか少しだけ軽い。
今日もまた一つ。
誰にも気づかれない、小さな一手。
**「小さな勝利」**を、静かに積み重ねたのだった。
【作者コメント】
今回は、「便利なシステムは、人を縛るものではなく、事実を公平に記録するもの」というテーマで描きました。
近年では、フリーアドレスや位置情報を活用したオフィス管理システムが普及し、社員の所在確認や会議室の利用状況などを効率的に把握できる環境が増えています。
もちろん、この作品のように役員会議の前に名札を置けば即座に疑われるという演出はフィクションですが、「システムをだまそうとした行動が、かえって自分の首を絞める」という構図は、現代のデジタル社会らしい皮肉として描いてみました。
今回の斎藤課長は、「名札だけ会社にあれば大丈夫」と考えました。
しかし、システムは肩書きや言い訳ではなく、「どこに名札があったか」という事実だけを記録します。
一方のマサシは、感情的に反論することなく、課長の指示を逆手に取り、システムが正確に事実を示す状況を作りました。
『サラリーマン奮闘記』では、
「ルールを軽く見た人ほど、自分の行動に足をすくわれる」
というテーマを、コミカルな展開の中で描いています。
そして今回もまた、派手な逆転劇ではなく、システムが淡々と真実を映し出したことで、小さな勝利が生まれました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回も、思わず「こんな会社、本当にありそう」と笑ってしまうような”会社あるある”をお楽しみください。


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