オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第27話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「筋トレよりも先に、理論だけが鍛えられていく男」です。
「一流のビジネスマンは体を鍛えている。」
そんな記事を読んだ瞬間、マサシは即座に肉体改造を決意します。
しかし今回も、トレーニングより先に始まるのは”形から入る”準備。
ヨガマット、コンプレッションウェア、巨大なプロテイン、高性能シェイカーなど、見た目だけは完全にアスリートです。
まだ一回も筋トレをしていないのに、
「まずは栄養補給だ。」
と堂々とプロテインを飲み干す姿は、まさにマサシらしい暴走ぶり。
そして、いよいよ始まった腕立て伏せ。
勢いよく挑んだものの、わずか3回で力尽きる展開には思わず笑ってしまいます。
しかし本当の見どころは、その後。
「筋肉は休ませることで成長する。」
「これ以上やらないことこそ最高のトレーニングだ。」
と、一流トレーナー顔負けの理論を語り始めます。
さらにベッドでくつろぎながら、2杯目のプロテインを飲み始める流れが今回最大のオチです。
最後に表示される
消費カロリー:12kcal
プロテイン摂取:350kcal(2杯目)
という数字が、すべてを物語っています。
筋肉ではなく、言い訳だけがパンプアップしていくマサシの姿を、ぜひ楽しんでいただければ嬉しいです。
【本文】
資格試験の「完璧な準備(学習時間3分)」を終えた翌日。
マサシはベッドの上でスマホをいじりながら、何気なくビジネス系の記事を読んでいた。
そこにはこう書かれていた。
「一流のビジネスマンは、例外なく体を鍛えている」
マサシはその文章を見て、ゆっくりと起き上がる。
「なるほど……」
「健全な精神は健全な肉体に宿る」
「社会で戦うためには、まず基礎となる体力が必要不可欠だ!」
マサシは鏡の前に立つ。
そして自分の腹をつまんだ。
ぷに。
「……」
数秒の沈黙。
「よし」
「肉体改造だ」
もちろん、マサシは今回も形から入る男である。
その日の夜、ネット通販で大量のトレーニング用品を注文した。
翌日、部屋には巨大な段ボールが山のように届く。
中から出てきたのは、
・プロ仕様の極厚ヨガマット
・全身を締め付ける高機能コンプレッションウェア
・海外製の巨大プロテイン
・高性能シェイカー
「これだ……」
「俺に必要なのは**武器(装備)**だ」
マサシはすぐにウェアへ着替える。
全身をピッチリ包み込む黒いトレーニングウェア。
まだ何もしていないのに、すでにアスリートの雰囲気だけは完成していた。
「まずは栄養補給だ」
マサシはプロテインをシェイカーに入れ、完璧な分量で水を注ぐ。
シャカシャカシャカシャカ
勢いよく振る。
「よし……」
そして一気に飲み干す。
「美味い……!」
「筋肉の隅々まで栄養が行き渡るのがわかる……!」
(※まだ筋肉は使っていない)
そしてついにトレーニング開始。
マサシはYouTubeを開く。
タイトルは
「初心者向け・限界突破の腕立て伏せ」
動画のトレーナーが言う。
「では、まず10回いきましょう!」
マサシは気合十分でヨガマットに手をつく。
「ふんっ!」
1回。
「はっ!」
2回。
「ぐっ……!」
3回。
腕が震える。
ぷるぷるぷるぷる
そして――
ドサッ。
マサシはマットに崩れ落ちた。
腕は完全に限界だった。
しかし、マサシの顔に後悔はない。
むしろ満足そうな表情で天井を見上げている。
「ふう……」
「十分だ」
そしてゆっくりと語り始める。
「筋肉はな……」
「破壊されたあとに休ませることで強くなる」
「いわゆる超回復だ」
マサシは力強くうなずく。
「オーバートレーニングは怪我の元」
「今の俺にとって、これ以上やらないことこそが」
「最高のトレーニングと言える」
完璧な理論で自分を納得させたマサシ。
そのままウェア姿でベッドへ転がり、スマホを開く。
「ご褒美だな」
そう言って、2杯目のプロテインを優雅に飲み始めた。
そのとき。
腕につけた真新しいスマートウォッチが数字を表示する。
今日の消費カロリー:12kcal
そして横には、
プロテイン摂取カロリー:350kcal(2杯目)
マサシはその数字を見て、静かに頷いた。
「……順調だ」
――筋肉よりも先に、
見事な言い訳がパンプアップしていた。
【作者コメント】
筋トレを始めると、多くの人が最初に興味を持つのは、意外にも「トレーニング」ではなく、ウェアやプロテイン、サプリメントだったりします。
私自身も、最初は道具を揃えただけで強くなったような気分になった経験があります。
今回のマサシは、そんな”形から入りたくなる心理”を極端に描いたキャラクターです。
「超回復」という言葉は実際に存在する考え方ですが、それを“3回腕立てをしただけで今日は十分”という都合のいい理由に変えてしまうところが、マサシらしさ全開になっています。
努力を始める前から、努力を終える理由だけは完璧に用意してしまう。
そんな誰もが少しだけ心当たりのある姿を、笑いに変えられたらと思いながら描きました。
もし読んでくださった皆さんが、
「自分も道具だけ揃えて満足したことがある」
「プロテインだけ飲んで安心したことがある」
と少しでも共感しながら笑っていただけたなら、この作品を描いた甲斐があります。


