オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第28話
バイトの休憩中、スマホ片手にSNSを眺めていたマサシは、ふと流れてきた広告に目を奪われる。
「寝ているだけで月収100万円! 働いたら負け。これからは不労所得の時代だ!」
その瞬間、マサシの中で何かが弾けた。
「……来たか」
得意の“前向き変換”がフル回転を始める。
「俺はこれまで、自分の時間を切り売りして小銭を稼ぐという、非効率極まりない生き方をしていた……。だが違う。本当の勝ち組は、金に働かせる側だ!」
休憩が終わるや否や、レジに立つ同僚に向かって堂々と宣言する。
「俺は決めた。このバイトは今月で辞める。これからはビジネスオーナーとして、不労所得だけで生きていく!」
あまりの急展開に、同僚はため息をつく。
「お前、昨日“筋トレ3日で人生変わる”って言ってたよな。で、今日は投資家か?」
しかしマサシは聞く耳を持たない。スマホを掲げ、得意げに言い放つ。
「これだ! 全自動・爆益AIトレードアプリ! 少額の元本を入れるだけで、AIが24時間世界中の市場から利益を稼ぎ続ける。俺は寝て待つだけ!」
同僚は即答する。
「詐欺だろ」
だがマサシは鼻で笑う。
「凡人には分からない領域だな」
そしてその日のうちに、貯めていたバイト代をほぼ全額アプリに入金。
「これで俺も“資産家”か……」
その夜、ベッドに寝転びながらニヤニヤと未来を思い描く。
高級マンション、自由な生活、バイト先に颯爽と現れる自分――。
「明日には、このレジが“思い出の場所”になるな……」
【数日後】
マサシの様子は一変していた。
バイト中にもかかわらず、1分おきにスマホを確認。レジ操作もどこかぎこちなく、顔色は明らかに悪い。
「お前、大丈夫か?」
同僚の問いにも、生返事しか返せない。
そこへ常連客の斎藤課長が来店。
「お、マサシ君。最近元気ないな?」
しかしマサシは反応しない。ただスマホを凝視し、指先が震えている。
異様な空気を感じた同僚が、そっと画面を覗き込む。
そこに表示されていたのは、急降下する真っ赤なグラフと、無慈悲な数字。
――本日の運用益:-98%
――ロスカット完了
一瞬、店内の空気が止まる。
「……あーあ」
同僚が静かに言う。
「AIに利益を搾り取られたのは、お前のほうだったな」
マサシの手からスマホが滑り落ちる。
膝が崩れ、その場にしゃがみ込む。
「働いたら負け……働いたら負け……」
壊れたように同じ言葉を繰り返すマサシ。
だがその現実は、あまりにも皮肉だった。
結局、翌日も彼は同じ場所に立っていた。
同じレジ、同じ制服、同じ時給。
ただ一つ違うのは――
口座残高だけが、ほぼゼロになっていたことだった。
「……やっぱり、働くしかないのか……」
小さくつぶやきながら、マサシはバーコードをスキャンする。
ピッ、という音が、妙に現実的に響いていた。


