オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第23話
爽やかな朝。
山の空気は澄み渡り、鳥たちのさえずりがキャンプ場に響き渡っていた。
――しかし、その爽やかな空気とは裏腹に、車の中はまるで地獄のような状態だった。
昨夜、テントが風で崩壊してしまい、急遽「車中泊」となった一家。
狭い車内のシートで体を無理やり折り曲げながら一夜を過ごした結果、誰一人まともに眠れていなかった。
運転席ではパパが首を押さえながら顔をしかめている。
「あいたた……体がバキバキだ……」
背中も腰も完全に固まっている。
助手席のママも目の下にうっすらクマを作り、後部座席の子供たちもぼんやりした顔で座っていた。
誰も口を開かない。
ただ重い沈黙だけが車内に流れている。
しばらくしてパパが小さく言った。
「……片付けるか。」
こうして撤収作業が始まった。
パパは気合いを入れて宣言する。
「キャンプの基本は“来た時より美しく”だ!」
しかしその言葉とは裏腹に、現実は厳しかった。
昨夜崩れたテントは、夜露と泥でぐちゃぐちゃになっている。
ポールは歪み、布は重たく湿り、どこから手を付けていいのか分からない状態だった。
パパは必死にテントを折り畳もうとする。
ぐちゃ……ぐちゃ……
「くっ……泥が……!」
なんとか小さくまとめようとするが、どうやっても元の袋に入らない。
「入らない……!」
テントと格闘するパパの姿は、まるで巨大な布の怪物と戦っているようだった。
その様子を遠くから見つめる家族。
そして周囲のキャンパーたちも、手慣れた様子でテントを片付けながらチラチラとこちらを見ている。
「あーあ……」
そんな同情の視線が静かに刺さる。
泥だらけになりながら、ようやくテントを車に押し込んだ頃には、パパの体力はすっかり限界だった。
帰りの車内。
パパは疲労困憊の表情でハンドルを握っていた。
しばらく沈黙が続いた後、パパが弱々しく口を開く。
「……次は……」
「エアコン付きのコテージにしようか……」
その言葉に、ママは窓の外を見つめたまま即答した。
「そうね。」
「絶対そうして。」
あまりにも迷いのない返答だった。
そして家に帰ると、そこには天国のような空間が待っていた。
エアコンの効いたリビング。
柔らかいソファ。
テレビの明るい音。
ママと子供たちはくつろぎながらテレビを見て笑っている。
その頃、庭では――
パパが一人、泥だらけの巨大テントをホースで洗っていた。
シャアアア……
水をかけながら、パパは小さくつぶやく。
「……もうキャンプはこりごりだ……」
こうしてパパのアウトドア人生は、静かに幕を閉じたのであった。


