【フリーター奮闘記】第21話『FIRE(経済的自立と早期リタイア)』

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ある日の昼休み。
マサシは公園のベンチに座り、コンビニの安い弁当を食べながら静かに宣言した。

「労働に時間を搾取される人生はもう終わりだ」

同僚たちは怪訝そうな顔で彼を見る。

マサシは続けた。

「これからの時代はFIREだ」

FIRE――
Financial Independence, Retire Early。
つまり、経済的自立を達成し、働かずに生きていくというライフスタイル。

マサシは胸を張って言う。

「俺は不労所得だけで生きる」

その日から、マサシの生活は一変した。

給料の9割を投資に回すための極限節約生活が始まったのだ。

昼食は、公園の水道水とスーパーの見切り品のもやし。

同僚たちが焼肉ランチへ向かう中、マサシはもやしを噛みながら静かにつぶやく。

「今の空腹は未来への投資だ」

「複利は裏切らない」

そんなマサシを見て、友人が興味本位で尋ねた。

「で、具体的に何に投資してるの?」

「S&P500?それともオルカン?」

するとマサシはゆっくりと笑った。

そしてカバンを机の上に置き、勢いよく中身を取り出す。

ドサッ。

テーブルいっぱいに広がる紙束。

それは――

大量の宝くじだった。

年末ジャンボ。

連番、バラ、まとめ買い。

友人が目を丸くする。

「……え?」

「それ投資なの?」

マサシは自信満々に答える。

「年利5%とか、そんな地味な投資は待ってられない」

「俺は資本主義のゴールテープをショートカットする」

「これは一撃必殺のレバレッジ投資だ」

その言葉に、周囲は静まり返った。

数日後。

ついに結果発表の日。

マサシはスマホで当選番号を確認する。

手が震える。

「……来い」

画面に表示された結果。

当選金額:300円

マサシの顔が固まった。

「……嘘だろ」

「給料全部突っ込んだのに……」

財布の中を見る。

残金はほぼゼロ。

生活費すら残っていない。

その夜。

マサシは部屋で、実家から送られてきた米を握っていた。

具なしの塩おにぎり。

それを黙々と食べながら、小さくつぶやく。

「……これは貧困じゃない」

「むしろ逆だ」

「これは“サイドFIRE”の予行演習だ」

「物質的な豊かさに依存しない生き方」

「それを今、俺は体現している」

そう言いながら、マサシは炭水化物だけの食事でむくんだ頬をさする。

そして静かに言った。

「……まあ」

「明日もバイト行くけどな」