【フリーター奮闘記】第19話『持たない暮らし(エッセンシャル思考)』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

ある日の夜。
散らかり放題の自室を見渡しながら、マサシは深いため息をついた。

床には空き缶。
脱ぎ捨てた服。
読みかけの本。
コンビニ袋。

物が多すぎる。

ふとスマホを見ると、SNSには「ミニマリスト生活」を紹介する投稿が流れていた。

白く整った部屋。
机と椅子だけのシンプルな空間。
そこに書かれている言葉は――

「物を減らすと、人生が軽くなる」

マサシの目がゆっくりと見開く。

「……そうか」

小さくつぶやく。

「俺が停滞している理由は、これだ」

「モノだ」

物が多いから思考が乱れる。
思考が乱れるから人生が進まない。

つまり――

「モノに支配される人生は終わりだ」

マサシは立ち上がり、宣言する。

「今日から俺はミニマリストだ」

そして断捨離が始まった。

テーブル。
電子レンジ。
読みかけの本。
昔のゲーム。

さらには思い出の品まで。

マサシは次々とゴミ袋へ詰め込んでいく。

「これは執着」

「これもノイズ」

「思考の邪魔だ」

やがて部屋は驚くほどすっきりした。

というより――

ほぼ何もなくなった。

夜。

がらんどうの部屋にマサシは一人座っていた。

カーテンも捨てたため、街灯の光がそのまま差し込んでいる。

布団もない。

床は冷たいフローリング。

マサシは腕を組み、静かに呟く。

「……これだ」

「この欠落」

「この不自由さが、人間を強くする」

しかし数分後。

床の冷たさがじわじわと身体に伝わってくる。

背中が痛い。

寒い。

とても寒い。

マサシの身体が小さく震える。

それでも自分に言い聞かせる。

「これは……」

「ハングリー精神を鍛える修行だ」

しかし深夜2時。

ついに限界が訪れた。

「無理だ!!」

マサシは立ち上がり、玄関を飛び出す。

向かった先は――

マンションのゴミ捨て場。

自分がさっき捨てたゴミ袋を探す。

そして見つけた。

せんべい布団。

さらに――

アニメキャラの抱き枕。

マサシはそれらを抱えて全力で部屋へ戻った。

床に布団を敷き、抱き枕を抱きしめる。

「……ホッ」

深いため息をつく。

そして小さくつぶやいた。

「これは甘えじゃない」

「精神衛生を保つための……」

「外部拡張ストレージだ」

そう自分に言い聞かせながら、
マサシは安心した表情で眠りにつくのだった。

「……これは甘えじゃない。俺の精神衛生を保つための『外部拡張ストレージ(精神安定剤)』として、再定義しただけだ」 と、薄汚れた抱き枕に顔をうずめ、安堵の表情で自分を納得させる。