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【フリーター奮闘記】第19話『持たない暮らし(エッセンシャル思考)』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「持たない暮らし」と「必要なものまで手放すこと」は違うということです。

散らかった部屋を見渡したマサシは、SNSで見かけたミニマリスト生活に感化され、

「物を減らせば、人生は軽くなる。」

という言葉を、そのまま人生の真理として受け入れます。

そこから始まるのは、いつもの”極端な形から入る”マサシ。

家具や本だけでなく、思い出の品まで

「これは執着」
「これもノイズ」

と言いながら次々に処分していく姿は、勢いがありながらもどこか危なっかしく、思わず笑ってしまいます。

特に印象的なのは、何もなくなった部屋で、

「この欠落が、人を強くする。」

と悟ったように語る場面。

しかし、現実はそんなに甘くありません。

寒さ、床の硬さ、眠れない夜。

理想と現実のギャップに耐えきれず、深夜にゴミ捨て場へ走り、自分が捨てた布団と抱き枕を必死に探す展開は、この作品最大の見どころです。

そして最後、

「これは甘えじゃない。精神衛生を保つための“外部拡張ストレージ”だ。」

という、いかにもマサシらしい理屈で自分を納得させる締めくくりも秀逸です。

失敗しても必ず前向きな理由を作り出すマサシらしさが、この一話にも存分に詰まっています。

【本文】

ある日の夜。
散らかり放題の自室を見渡しながら、マサシは深いため息をついた。

床には空き缶。
脱ぎ捨てた服。
読みかけの本。
コンビニ袋。

物が多すぎる。

ふとスマホを見ると、SNSには「ミニマリスト生活」を紹介する投稿が流れていた。

白く整った部屋。
机と椅子だけのシンプルな空間。
そこに書かれている言葉は――

「物を減らすと、人生が軽くなる」

マサシの目がゆっくりと見開く。

「……そうか」

小さくつぶやく。

「俺が停滞している理由は、これだ」

「モノだ」

物が多いから思考が乱れる。
思考が乱れるから人生が進まない。

つまり――

「モノに支配される人生は終わりだ」

マサシは立ち上がり、宣言する。

「今日から俺はミニマリストだ」

そして断捨離が始まった。

テーブル。
電子レンジ。
読みかけの本。
昔のゲーム。

さらには思い出の品まで。

マサシは次々とゴミ袋へ詰め込んでいく。

「これは執着」

「これもノイズ」

「思考の邪魔だ」

やがて部屋は驚くほどすっきりした。

というより――

ほぼ何もなくなった。

夜。

がらんどうの部屋にマサシは一人座っていた。

カーテンも捨てたため、街灯の光がそのまま差し込んでいる。

布団もない。

床は冷たいフローリング。

マサシは腕を組み、静かに呟く。

「……これだ」

「この欠落」

「この不自由さが、人間を強くする」

しかし数分後。

床の冷たさがじわじわと身体に伝わってくる。

背中が痛い。

寒い。

とても寒い。

マサシの身体が小さく震える。

それでも自分に言い聞かせる。

「これは……」

「ハングリー精神を鍛える修行だ」

しかし深夜2時。

ついに限界が訪れた。

「無理だ!!」

マサシは立ち上がり、玄関を飛び出す。

向かった先は――

マンションのゴミ捨て場。

自分がさっき捨てたゴミ袋を探す。

そして見つけた。

せんべい布団。

さらに――

アニメキャラの抱き枕。

マサシはそれらを抱えて全力で部屋へ戻った。

床に布団を敷き、抱き枕を抱きしめる。

「……ホッ」

深いため息をつく。

そして小さくつぶやいた。

「これは甘えじゃない」

「精神衛生を保つための……」

「外部拡張ストレージだ」

そう自分に言い聞かせながら、
マサシは安心した表情で眠りにつくのだった。

「……これは甘えじゃない。俺の精神衛生を保つための『外部拡張ストレージ(精神安定剤)』として、再定義しただけだ」 と、薄汚れた抱き枕に顔をうずめ、安堵の表情で自分を納得させる。

【作者コメント】

「持たない暮らし」や「ミニマリズム」は、近年多くの人に支持されている素敵な考え方です。

本当に必要なものを見極め、身軽に暮らすことで心にも余裕が生まれるという考えには、私自身も共感する部分があります。

ただ今回は、その考え方をマサシらしく”100か0か”で受け止めたらどうなるかを描いてみました。

物を減らすことが目的になってしまい、本当に必要な布団や抱き枕まで捨ててしまう姿は、極端だからこそ笑える一方で、「何事もバランスが大切」ということも表現しています。

そして、深夜にゴミ捨て場へ走って布団を回収しながら、

「外部拡張ストレージ」

という苦し紛れの理屈を生み出すのも、マサシならではです。

失敗しても、それを無理やり前向きな言葉へ変換してしまう姿勢は、このシリーズの変わらない魅力なのかもしれません。

笑いながら、「本当に手放すべきものは何なのか」を少しだけ考えていただけたら嬉しいです。