オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第3話
夕方の街。
仕事帰りの人々が行き交う駅前の通りを、マサシはふらふらと歩いていた。コンビニのバイトを終えた帰り道。今日も特別な出来事はなく、いつも通りの一日だった。
その時、背後から声がかかる。
「おお、マサシじゃん!久しぶり!」
振り向くと、そこに立っていたのは高校時代の同級生・亮だった。
きっちりとしたスーツ姿に、手にはビジネスバッグ。いかにも“仕事帰りの社会人”という雰囲気だ。
「あ、亮……久しぶりだな」
マサシは少し驚きながらも、ぎこちなく笑う。
二人はしばらく歩きながら近況を話すことになった。
亮は楽しそうに話す。
「いやー最近忙しくてさ。残業ばっかりだよ」
「でもまあ、来月昇給あるかもしれないんだよね」
その何気ない言葉が、マサシの胸に静かに突き刺さる。
昇給。
残業。
忙しい。
どれも“社会人としてちゃんと働いている人間”の言葉だった。
一瞬、言葉に詰まるマサシ。
しかしすぐに、余裕のある表情を作る。
「へぇ、すごいじゃん」
「まあ俺はさ、今フリーでやってるから」
亮が少し首を傾げる。
「フリー?」
マサシは自信ありげに続ける。
「俺は今、あえて“選んで”フリーなんだよ」
「社会勉強っていうかさ」
「今はいろんな経験をしてる期間なんだよ」
まるで成功している人間のような理論を並べるマサシ。
しかしその説明は、どこかふわふわしている。
亮は「へぇ、そうなんだ」と相槌を打ちながらも、どこか微妙な表情を浮かべていた。
やがて交差点に差しかかる。
「じゃあ俺、こっちだから」
亮はそう言って手を振る。
「まぁ……お互い頑張ろうな」
その言葉は、励ましなのか、それとも遠回しな同情なのか。
マサシにはよく分からなかった。
スーツ姿の亮は、人混みの中へ消えていく。
夕焼けに染まる街。
マサシは一人、反対方向へ歩き出す。
ポケットに手を突っ込みながら、ぽつりとつぶやく。
「フッ……」
「今は俺のターンじゃないだけだ」
そう言って前を向くマサシ。
しかしその背中は、どこか少しだけ小さく見えた。


