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【フリーター奮闘記】第13話 『選ばれし者』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「才能を見込まれた」と「勧誘された」はまったく違うということです。

卒業以来ほとんど連絡を取っていなかった同級生から突然届いたメッセージ。

「昔から他の奴と違うオーラがあった。」

その一言だけで、

「ついに俺の才能が見つかった。」

「ヘッドハンティングだ!」

と確信してしまうマサシの前向きすぎる思考には、思わず笑ってしまいます。

ファミレスで始まる熱い成功論も、マサシは「クリエイターとして評価された話」だと思って聞いている一方、相手はネットワークビジネスの勧誘を進めているだけ。

同じ会話をしているのに、お互いがまったく違う未来を思い描いている”絶妙なすれ違い”が、今回最大の見どころです。

そして、スターターキット30万円という現実を突きつけられた瞬間、財布の中には840円しかないマサシ。

それでも、

「俺の価値は、誰かが決めた30万じゃ買えない。」

とキリッと言い放つ姿は格好いいのですが、その本当の理由が「お金がないだけ」というオチが、マサシらしい魅力を際立たせています。

最後にセールのカップ麺をすすりながら、

「成功する奴ってのは、こういう誘惑に負けない。」

と満足している姿まで含めて、理想と現実のギャップを笑いに変えた一話となっています。

【本文】

ある日の夜。
マサシのスマホに、突然メッセージが届く。

送り主は――高校時代の同級生。

それほど仲が良かったわけでもない相手だ。
むしろ、卒業してから一度も連絡を取っていない。

メッセージにはこう書かれていた。

「久しぶり!
マサシってさ、昔から他の奴と違うオーラあったよな」

「ちょっと話があるんだけど」

その言葉を見た瞬間、マサシの脳内で何かがカチッと切り替わる。

「……来たか」

「ついに来たな」

マサシはゆっくりとスマホを見つめながらつぶやく。

「ヘッドハンティングだ」

「俺の才能を嗅ぎつけたんだな」

ここ最近、動画配信やブログなど、様々な「成功の種」を考えてきたマサシ。
その片鱗が、ついに誰かの目に留まったのだ――と確信する。

数日後。

マサシは少しだけ気合いを入れた服装で、街のファミレスへ向かった。

店内で待っていた同級生は、やけに自信満々な笑顔を浮かべている。

席に着くと、すぐに熱い話が始まった。

「今の時代さ……」

「会社に縛られて働くのって、もう古いんだよ」

「大事なのは“権利収入”なんだ」

「夢、自由、時間――全部手に入る」

マサシは深く頷く。

「わかる」

「俺もずっと思ってた」

「縛られない生き方をしたいって」

同級生はさらに勢いを増す。

「これからは“オーナー”の時代なんだ」

「働くんじゃなくて、仕組みを持つ」

二人の会話は、妙に盛り上がっていた。

しかし――

微妙に話が噛み合っていない。

マサシの頭の中では、
「クリエイティブな才能を見込まれてのスカウト」

一方、同級生の頭の中では、
「怪しいビジネスへの勧誘」

話が最高潮に達したところで、同級生はカバンから資料を取り出した。

そこには大きく書かれている。

『スターターキット 300,000円』

「これが最初の投資なんだ」

「これさえあれば、マサシも“オーナー”だ!」

マサシは一瞬、固まる。

そして静かに財布を開く。

中には――

840円。

しかも来月のシフトは減らされている。

沈黙のあと、マサシはコーヒーを飲み干した。

そしてキリッとした表情で言う。

「悪いな」

「俺の価値は……」

「誰かが決めた値段、30万なんかじゃ買えないんだ」

(※ただ単に金がない)

同級生と別れたあと、夜道を歩くマサシ。

深く息を吐きながらつぶやく。

「……危なかった」

「俺の才能が搾取されるところだった」

しかし家に帰ると、晩ご飯はセールで買ったカップ麺。

湯気の向こうで、マサシは静かに箸を持つ。

そしてぽつりと言った。

「まあ……」

「成功する奴ってのは、こういう誘惑に負けないんだよな」

マサシは財布を見る。残金840円。 さらに来月のシフトも減らされている。

マサシはコーヒーを飲み干し、キリッとした顔で言う。 「悪いな。俺の価値は、誰かに決められた値段(30万)じゃ買えないんだ」 (※単に金がなくて払えないだけ)

帰り道、 「……危なかった。俺の才能が搾取されるところだった」 と安堵するが、晩ご飯はカップ麺(セール品)になる。

【作者コメント】

「久しぶり!」

そんな一通のメッセージから始まる出来事は、誰にでも少し身近なものかもしれません。

久しぶりの再会には期待もありますが、その裏に別の目的が隠れていることもあります。

今回のマサシは、「自分の才能が認められた」と信じ切っていました。

実際には勧誘だったのですが、それでも最後まで「自分の価値を守った」と前向きに解釈するところが、いかにもマサシらしいところです。

もちろん、現実にはネットワークビジネスそのものが違法というわけではありませんし、法律を守って健全に事業を行っている会社も数多くあります。

ただ、「簡単に稼げる」「誰でも成功できる」といった言葉だけで大きなお金を支払うことには、十分な注意が必要です。

今回はそんなテーマを、マサシらしい勘違いとポジティブ思考を交えながら、少しコミカルに描いてみました。

「危なかった」と安心しているマサシですが、本当に彼を救ったのは鋭い判断力ではなく、財布の中の840円だったのかもしれません。