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【サラリーマン奮闘記】第10話「直行直帰の男(GPSは正直)」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「便利なシステムは、嘘も見逃さない」です。

ラーメンフェスの有給休暇を根に持つ斎藤課長。

その腹いせなのか、自分は「A社との極秘打ち合わせ」と称して颯爽と会社を後にします。

しかし、その実態はまさかの平日ゴルフ。

「緊急時以外は連絡するな!」

という念押しが、かえって怪しさを倍増させているのも笑いどころです。

そして運命の電話。

A社から「斎藤課長はいらっしゃいますか?」と問い合わせが入り、タケルの嫌な予感は確信へと変わります。

最新の社員用GPSシステムを確認すると、画面には堂々と表示された

「Midorigaoka Golf Club」

しかも場所は18番ホール。

言い逃れのできない決定的な証拠に、思わず吹き出してしまいます。

さらに総務・ミユキが登場すると、一気に事態は加速。

社用カード停止、部署チャットへの一斉通知、顛末書提出命令と、まさに”コンプライアンスの鉄槌”が下されます。

最後はゴルフ場でカードが使えず青ざめる課長と、それを想像しながら静かに胃薬を飲むタケル。

「また胃薬か」と思わせつつ、少しだけ笑みを浮かべるラストが、このシリーズらしい締めくくりになっています。

【本文】

ラーメンフェスで有給休暇を満喫したタケル。その翌週、オフィスには微妙な空気が漂っていた。原因はもちろん斎藤課長である。

表向きは「部下の休暇は大事だ」と言いながらも、内心ではまったく納得していない様子だった。

(部下ばかり休んで……俺は働いてるのに……)

だが課長にはもう一つ気がかりなことがあった。
それは、自分のボーナス査定である。

「部下の有給取得率は上げろ」と会社は言うが、自分の評価は落としたくない。そんな複雑な心境の中、斎藤課長はある“妙案”を思いつく。

それは——

直行直帰を装った平日ゴルフだった。

その日の午後、課長は妙に神妙な顔でタケルの席へやってくる。

「今日はA社の重役との極秘打ち合わせだ」

「機密事項が多いから、緊急時以外は絶対に俺の社用スマホに連絡してくるなよ」

そう言い残すと、課長は書類カバンを片手に、いかにも仕事ができそうな表情でオフィスを後にした。

タケルはその背中を見送りながら小さく呟く。

「……何か嫌な予感がするな」

数時間後。

オフィスの電話が鳴った。

「お世話になっております。A社の鈴木ですが」

タケルは一瞬固まる。

「急ぎで確認したい件がありまして、斎藤課長はいらっしゃいますか?」

タケルの胸に、嫌な予感が確信へと変わる。

(打ち合わせ中のはずですよね……?)

タケルは「念のため」と言いながら、最近導入されたばかりのシステムを開く。

社員用防災GPSシステム(社用スマホ連動)

地図画面が表示される。

そして——

斎藤課長のアイコンが、都心とは真逆の場所で点滅していた。

表示された文字。

「Midorigaoka Golf Club」

しかも場所は、18番ホールのど真ん中

タケルはゆっくりと目を閉じる。

「……やっぱり」

その瞬間。

背後から静かな声が聞こえた。

「何か問題でも?」

振り返ると、総務のミユキが立っていた。

画面を見たミユキの目が鋭く光る。

「なるほど」

「就業時間中の私的ゴルフ」

「完全な職務専念義務違反ですね」

ミユキは淡々とキーボードを叩く。

まず、課長の社用クレジットカード機能を停止

続いて、部署全員が見ているグループチャットにメッセージを送信する。

【総務より警告】
斎藤課長、社用スマホのGPSがゴルフ場を示しています。
直ちに帰社し、顛末書を提出してください。

オフィスが一瞬静まり返る。

数秒後、社員たちのスマホが一斉に震えた。

一方その頃。

ゴルフ場のフロントでは、斎藤課長がカードを差し出していた。

「すみません、お客様。このカード使えません」

さらにスマホを見ると、部署チャットの通知が大量に届いている。

課長の顔が一気に青ざめる。

オフィスでは、その様子を想像しながらタケルが静かに胃薬を飲んでいた。

「……有休明け早々、胃に悪いな」

しかしその口元には、ほんのわずかな笑みが浮かんでいた。

こうしてタケルは、また一つ小さな勝利を手にしたのだった。

【作者コメント】

仕事では「信頼」が何よりも大切です。

だからこそ、直行直帰やリモートワークなど自由な働き方は、社員一人ひとりの誠実さによって成り立っています。

今回の斎藤課長は、その信頼を利用して”平日ゴルフ”という大胆な行動に出ました。

しかも「極秘案件だから連絡するな」という念入りな設定まで用意するあたり、妙なところだけ準備がいいのが課長らしいところです。

しかし現代の会社では、GPSや勤怠システム、利用履歴など、便利な仕組みが数多く導入されています。

便利なシステムは業務を支えてくれる一方で、不正やごまかしもきちんと記録してしまいます。

つまり、

「隠し通せる時代ではなく、正直に働くことが一番効率的な時代」

なのかもしれません。

そして今回も、会社を守ったのは派手なヒーローではなく、冷静に事実を確認するタケルと、規程に沿って淡々と対応するミユキでした。

日々の仕事でも、特別な能力より「当たり前のことを当たり前に行う」ことの大切さを感じてもらえたら嬉しいです。

『サラリーマン奮闘記』では、職場で起こりそうな出来事を少し大げさなコメディとして描きながら、笑いの中に仕事の教訓も織り交ぜています。

今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回は、斎藤課長がどんな騒動を巻き起こすのか、ぜひ楽しみにしていてください。