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【サラリーマン奮闘記】第8話「生成AIと、危険な丸投げ」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「AIは万能でも、使う人が万能とは限らない」です。

ニュースで見たAIブームにすっかり影響された斎藤課長。

「AIを使えば企画書なんて5分だ!」

と胸を張るものの、最初のプロンプトは

「A社向けの儲かる企画書、いい感じでよろしく」

という、あまりにも雑な丸投げ指示。

AIから当然の質問が返ってくると、

「気が利かん!」

とAIに逆ギレする姿は、思わず笑ってしまいます。

しかし、本当の見どころはその後。

「なら会社のデータを全部読ませればいい!」

という危険すぎる発想から、機密情報や個人情報まで外部AIへアップロードしようとする場面は、笑い話では済まされない緊張感があります。

そこへタケルの

「課長、ストーーップ!!」

という全力の制止。

さらに総務・ミユキがコンプライアンス規程を片手に現れ、パソコンを没収する流れは、まるで会社を守る最後の砦のようです。

そして最後は、最新AIに頼ろうとしていた課長が、結局紙とペンで企画書を書くという皮肉なオチ。

便利な時代だからこそ、人間の判断力が何より大切だと感じさせる一話になっています。

【本文】

月曜の朝、オフィスに響き渡ったのは斎藤課長の自信満々の宣言だった。どうやら昨夜、ニュースかネット記事で「AI革命」の特集を見たらしい。最新トレンドに目がない課長は、すっかりAIの虜になっていた。

「お前たちももっとAIを活用したまえ!」

タケルとショウに向かって胸を張る斎藤。

「AIを使えば企画書なんて5分で終わる!」

そのドヤ顔に、ショウは小さく呟く。

「……また始まった」

実は翌日、会社にとって重要なクライアントであるA社向けのプレゼンが予定されていた。通常なら数日かけて準備する資料だが、斎藤はパソコンの前に座り、AIチャットを開く。

そして入力した指示は、たった一行。

「A社向けの儲かる企画書、いい感じでよろしく」

あまりにも曖昧すぎるプロンプトだった。

数秒後、AIが返したのは当然ながら一般的な質問だった。

「A社とはどのような企業ですか?」
「具体的な目標や条件を教えてください」

しかし、それを見た斎藤は不機嫌そうに眉をひそめる。

「なんだこのAIは!」

「気が利かん!」

そして、信じられない行動に出る。

「なら、うちの会社のデータを全部読み込ませてやる!」

そう言って社内フォルダを開き、
未発表の新製品データ、
クライアントの個人情報リスト、
さらには極秘の財務データまで、
無料の外部AIチャットにドラッグ&ドロップし始めたのだ。

その瞬間。

タケルの顔から血の気が引いた。

「課長、ストーーップ!!」

オフィス中に響く声。

「未承認の外部AIサービスに社内の機密情報や個人情報を入力するのは、当社の情報セキュリティガイドライン違反です!」

「即座に情報漏洩と見なされます!」

“情報漏洩”という言葉に、斎藤の指が止まる。
エンターキーを押す寸前だった。

そこへ、さらに追い打ちがかかる。

背後から静かな声が響いた。

「課長」

振り向くと、総務のミユキが立っていた。

手には分厚い冊子。

「コンプライアンス規定」

ミユキは冷静に言う。

「セキュリティ監査のため、端末を一時没収します」

斎藤の顔が青ざめる。

「え、ちょ、ちょっと待て」

しかしミユキは容赦しない。

パソコンを静かに持ち上げると、そのまま去っていった。

残された斎藤は、完全に戦力を失う。

「……どうするんだ」

「明日の企画書……」

タケルはそっと机の上に紙を置く。

「……紙とペンならあります」

数時間後。

斎藤は机に向かい、半泣きで手書きの企画書を書いていた。

その姿を横目に、タケルは静かに胃薬を取り出す。

会社を揺るがすかもしれない大惨事を、また一つ未然に防いだのだ。

キリキリと痛む胃をさすりながら、タケルは思う。

(……今日も、小さな勝利ですね)

こうしてオフィスの平和は、またしてもギリギリのところで守られたのだった。

【作者コメント】

生成AIは、仕事を大きく変える可能性を持つ素晴らしい技術です。

企画書のアイデア出しや文章作成、情報整理など、正しく活用すれば業務効率は大きく向上します。

しかし一方で、

「何でもAIに入れればいい」

という考え方には、大きな危険も潜んでいます。

企業には、お客様の個人情報や機密情報、開発中の製品情報など、絶対に外部へ漏らしてはいけないデータが数多く存在します。

便利だからこそ、「何を入力してよいのか」「何を入力してはいけないのか」を理解して使うことが重要です。

今回の斎藤課長は、その境界線を見事に飛び越えようとしてしまいました。

もしタケルが止めていなければ、本当に大きな情報漏えい事故につながっていたかもしれません。

この作品はコメディですが、実際の企業でも生成AIの利用ルールやガイドラインを整備する動きが急速に進んでいます。

笑いながらも、

「便利なツールほど、正しい知識とルールが必要」

ということを、少しでも感じていただけたら嬉しいです。

『サラリーマン奮闘記』では、職場で起こる”ありそうで、ちょっと大げさ”な出来事を通して、仕事の楽しさや難しさを描いています。

これからも、タケルたちが繰り広げるドタバタ劇を楽しみながら、職場で役立つちょっとした気づきも受け取っていただければ幸いです。