オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第9話
ある日の帰り道、マサシは駅前の宝くじ売り場の前で足を止めた。
ガラス越しに貼られたポスターには「億万長者誕生!」の文字。派手な色の広告が夜の街に輝いている。
「……買わなきゃ当たらない」
マサシは腕を組みながら真剣な顔でつぶやいた。
「これはギャンブルじゃない」
「投資だ」
自分にそう言い聞かせると、財布から千円札を取り出す。
「バラで10枚ください」
店員から受け取った宝くじを見つめながら、マサシはすでに少しだけ勝者の気分になっていた。
帰宅すると、マサシはすぐに机の前に座る。
宝くじを並べながら、スマホで当選金額の一覧を検索する。
「もし……一等だったら」
その瞬間、マサシの頭の中で壮大な未来が動き出した。
まずはタワーマンション。
高層階の窓から夜景が見える部屋。
ワイングラスを片手に、余裕の表情で夜景を眺める自分。
次に思い浮かぶのは、同級生の亮と好美だ。
「おい亮、久しぶり」
「ちょっと寿司でも行くか?」
二人を高級寿司屋に招待するマサシ。
カウンター席で板前が寿司を握る。
亮が驚いた顔で言う。
「マサシ……どうしたんだ?」
マサシは静かに笑う。
「いや、実はさ」
「投資でちょっと成功して」
余裕のドヤ顔。
好美は目を丸くする。
「えっ、すごい!」
亮も思わず言う。
「マサシ……すげぇな!」
マサシはワインを一口飲みながら、静かに言う。
「まあな」
そんな未来を想像しながら、マサシは一人でニヤニヤしていた。
気づけば時計は三時間も進んでいた。
妄想だけで、かなりの幸福感を味わってしまっている。
そしてついに――
当選番号発表の時間。
マサシはスマホを手に取り、宝くじの番号を一枚ずつ確認する。
「……」
「……」
「……あ」
画面には小さく表示されていた。
――結果:300円当選
当たったのは、たった一枚。
しかも300円。
マサシはしばらくその画面を見つめたあと、小さく息を吐いた。
「フン……」
「まあ、金で買える幸せなんて」
「どうせ薄っぺらいもんだしな」
完全に負け惜しみだった。
そのあとマサシはコンビニへ行き、当たった300円を使って発泡酒を一本買う。
部屋に戻り、缶を開ける。
「プシュッ」
一口飲んで、静かにつぶやく。
「……これが」
「現実的な投資だな」
部屋の中には、静かな夜の空気が流れていた。


