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【フリーター奮闘記】第6話 『クリエイティブな逃避』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「夢は大きい。でも、最初の一歩は意外と小さい。」です。

同級生との再会をきっかけに、「普通の会社員には向いていない」と考え始めたマサシ。

そこで思いついたのは、ブログや動画配信で一発当てるという新たな挑戦でした。

「俺の視点は鋭い。」
「これは絶対にバズる。」

頭の中では、すでに成功までのストーリーが完成しています。

ところが、現実は想像以上に地味でした。

アカウント登録。
IDの重複。
複雑なパスワード設定。

たったそれだけの作業に三時間も費やし、気づけば何一つ前へ進めないまま夜を迎えてしまいます。

それでもマサシは落ち込みません。

ノートに大きく書いた「革命前夜」の四文字を眺めながら、「アイデアは寝かせた方が熟成する」と前向き(?)に解釈する姿は、マサシらしさ全開です。

夢は壮大なのに、現実はアカウント登録でつまずく――。

そのギャップが笑いを誘いながらも、「何かを始めようとした人なら一度は経験したことがある」と共感できる一話になっています。

【本文】

ある日の夜、ワンルームの部屋でパソコンを前にしたマサシは、ふと大きなことを思いついたように腕を組んでいた。

「俺には……普通の仕事ってやつは合わないんだよな」

誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやく。
最近、同級生たちと会ったことで、社会の現実を少しだけ感じてしまったマサシ。しかしその現実を真正面から受け止めるのではなく、いつものように別の解釈へと変換する。

「そうだ……」

「俺は、普通の会社員に収まる器じゃない」

マサシの脳内では、何か大きな可能性が静かに広がり始めていた。

机の上にはノートパソコン。
その横にはスマホ。
さらに段ボールの箱の上には、安物のマイクや小型カメラまで並べられている。

「まずは形から入るタイプだからな」

マサシは満足げに頷く。

狙うは、動画配信かブログ。
インターネットの世界で一発当てる作戦だ。

「俺の視点って、結構鋭いからな」

「社会へのアンチテーゼ……」

「これは間違いなくバズる」

頭の中ではすでに成功した未来が完成している。

「まずはブログ開設か……いや、動画配信もありだな」

パソコンの画面には、アカウント登録ページが表示されていた。

ところが――

「パスワードは英数字記号を含む……?」

「え、IDもう使われてる?」

「……この名前もダメ?」

思った以上に登録作業が面倒くさい。

IDを考えては弾かれ、
パスワードを設定してはエラーが出る。

気づけば時間はどんどん過ぎていく。

そして――

三時間後。

パソコンの前に突っ伏すマサシの姿があった。

「……ID決まんねぇ……」

たったそれだけの作業で、すでに気力が削られていた。

結局、その日は何一つ作業が進まないまま夜になってしまう。

ベッドに入る前、マサシはノートを取り出し、ペンを握った。

そしてゆっくりと一行だけ書き込む。

――革命前夜

マサシはその文字をしばらく眺める。

「フッ……」

「今はまだ準備段階だからな」

「アイデアっていうのは、寝かせた方が熟成されるんだよ」

そう自分に言い聞かせながら、ノートを閉じる。

部屋の電気を消し、布団に入るマサシ。

まだ何も始まっていないのに、どこか満足そうな表情だった。

静かな部屋の中、ノートの表紙には大きく書かれた文字が残っている。

――革命前夜

しかし、その革命がいつ始まるのかは、まだ誰にも分からなかった。

【作者コメント】

「何か新しいことを始めよう。」

そう思った経験は、多くの人にあると思います。

ブログ、動画配信、資格取得、副業、起業……。

始める前は、「これならいける」と大きな可能性を感じます。

しかし実際に動き出すと、最初に待っているのは地味な作業の連続です。

アカウント登録。
ID決め。
パスワード設定。
プロフィール入力。

夢とはまったく関係のないところで時間が過ぎ、「今日はここまででいいか」となってしまうことも少なくありません。

今回のマサシは、まさにそんな”あるある”を体現しています。

それでも彼は、「革命前夜」とノートに書き、自分の可能性を信じ続けます。

少し空回りしているようにも見えますが、何かを変えたいという気持ちそのものは本物です。

今回の教訓は、

「夢を見ることは大切。でも、その夢は最初の一歩から始まる。」

ということです。

成功した人も、最初は同じようにアカウントを作り、プロフィールを書き、最初の投稿をするところから始まっています。

マサシはまだ、その”本当の第一歩”を踏み出せていません。

ですが、「変わりたい」と思い始めたこと自体が、これまでのマサシにはなかった小さな成長なのかもしれません。

『フリーター奮闘記』は、夢を語るだけの物語ではなく、夢と現実の間でもがきながら、一歩ずつ前へ進もうとする若者の物語です。

これからマサシの「革命前夜」が、本当の「革命の日」へと変わっていくのか――。

ぜひ、その成長を温かく見守っていただけたら嬉しいです。