【フリーター奮闘記】第6話 『クリエイティブな逃避』

オリジナルマンガ

ある日の夜、ワンルームの部屋でパソコンを前にしたマサシは、ふと大きなことを思いついたように腕を組んでいた。

「俺には……普通の仕事ってやつは合わないんだよな」

誰に言うでもなく、ぽつりとつぶやく。
最近、同級生たちと会ったことで、社会の現実を少しだけ感じてしまったマサシ。しかしその現実を真正面から受け止めるのではなく、いつものように別の解釈へと変換する。

「そうだ……」

「俺は、普通の会社員に収まる器じゃない」

マサシの脳内では、何か大きな可能性が静かに広がり始めていた。

机の上にはノートパソコン。
その横にはスマホ。
さらに段ボールの箱の上には、安物のマイクや小型カメラまで並べられている。

「まずは形から入るタイプだからな」

マサシは満足げに頷く。

狙うは、動画配信かブログ。
インターネットの世界で一発当てる作戦だ。

「俺の視点って、結構鋭いからな」

「社会へのアンチテーゼ……」

「これは間違いなくバズる」

頭の中ではすでに成功した未来が完成している。

「まずはブログ開設か……いや、動画配信もありだな」

パソコンの画面には、アカウント登録ページが表示されていた。

ところが――

「パスワードは英数字記号を含む……?」

「え、IDもう使われてる?」

「……この名前もダメ?」

思った以上に登録作業が面倒くさい。

IDを考えては弾かれ、
パスワードを設定してはエラーが出る。

気づけば時間はどんどん過ぎていく。

そして――

三時間後。

パソコンの前に突っ伏すマサシの姿があった。

「……ID決まんねぇ……」

たったそれだけの作業で、すでに気力が削られていた。

結局、その日は何一つ作業が進まないまま夜になってしまう。

ベッドに入る前、マサシはノートを取り出し、ペンを握った。

そしてゆっくりと一行だけ書き込む。

――革命前夜

マサシはその文字をしばらく眺める。

「フッ……」

「今はまだ準備段階だからな」

「アイデアっていうのは、寝かせた方が熟成されるんだよ」

そう自分に言い聞かせながら、ノートを閉じる。

部屋の電気を消し、布団に入るマサシ。

まだ何も始まっていないのに、どこか満足そうな表情だった。

静かな部屋の中、ノートの表紙には大きく書かれた文字が残っている。

――革命前夜

しかし、その革命がいつ始まるのかは、まだ誰にも分からなかった。