オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第8話
再び応募してからの数日間。
テツヤの生活は相変わらずだった。
昼は工場。
夜はコンビニ。
だが、心の中はこれまでとは明らかに違っていた。
(……今度はどうだろうな)
期待と不安が、同時に存在している。
前回は「どうせダメだ」と思っていた。
でも今回は違う。
「やれることはやった」という感覚があるからこそ、結果を待つ時間が妙に落ち着かない。
ある日の夜。
コンビニの休憩中、スマホが震えた。
見慣れない番号。
一瞬で分かる。
(……来た)
喉が乾く。
少し迷ったあと、通話ボタンを押す。
「もしもし」
声が少しだけ低くなる。
「〇〇株式会社の採用担当です」
その瞬間、周囲の音が遠くなる。
「先日の面接の件ですが――」
心臓が強く鳴る。
「ぜひ、次の選考に進んでいただきたいと考えております」
一瞬、言葉の意味が理解できなかった。
「……え?」
思わず聞き返す。
「二次面接のご案内をさせていただきます」
その言葉で、ようやく理解する。
(……通った)
頭の中で、何度もその言葉が反響する。
「……はい、ありがとうございます」
自分でも驚くほど、声が震えていた。
通話を終えたあと、しばらくその場に立ち尽くす。
何も変わっていないはずの休憩室。
でも、すべてが違って見えた。
(通った……)
たった一つの結果。
それだけで、ここまで感情が動くとは思っていなかった。
「……マジか」
小さくつぶやく。
胸の奥が熱くなる。
嬉しさと、少しの不安。
「ここからだろ」という現実も同時に押し寄せてくる。
その日の帰り道。
夜の街が、いつもより明るく感じた。
特別なことは何もない。
でも、足取りが少し軽い。
(……やれば、いけるのかもしれないな)
そんな考えが、自然と浮かぶ。
アパートに戻ると、テツヤはすぐにノートを開いた。
今までと同じように、書き出す。
「今回よかったこと」
「次に向けてやること」
だが、今回は少し違う。
反省だけではない。
「通った理由」も考える。
(何がよかったんだ?)
正解は分からない。
でも、自分なりに考える。
ちゃんと準備したこと。
自分の言葉で話したこと。
少なくとも、前とは違う自分だった。
「……これ、続けるしかないな」
自然とそう思う。
スマホを見つめる。
さっきの通話履歴が残っている。
それを見て、少しだけ笑う。
(ここまで来たんだな)
たった一歩。
でも、確実に前に進んでいる。
ベッドに座り、天井を見上げる。
部屋は相変わらず散らかっている。
生活もまだ何も変わっていない。
それでも――
「結果が出た」という事実は、テツヤの中で大きかった。
「……悪くないな」
静かにそうつぶやく。
完全な成功ではない。
まだ途中だ。
でも、「やれば結果が返ってくる」という感覚を、初めて掴んだ。
それは、これまでの自分にはなかったものだった。
夜は静かに更けていく。
明日もまた、工場とコンビニの一日が始まる。
それでも――
テツヤの中には、確かに変化があった。
「次も、やる」
その言葉には、もう迷いはなかった。


