オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第30話
深夜。ベッドの上でスマホをいじりながら、いつものようにネットの海を漂っていたマサシは、ある記事に目を奪われる。
「世界のトップエリートは、例外なく朝5時に起きている――」
「朝の静寂こそが、人生を変える“ゴールデンタイム”だ」
その瞬間、マサシの中でスイッチが入る。
「……来たな」
例によって“前向き変換モード”が発動する。
「俺はこれまで、夜に無駄な時間を過ごしていた……だが違う。成功者は朝を制する。つまり、俺も明日から“上の世界”に行けるということだ」
そう確信したマサシは、即座にスマホのアラームを5時に設定。
「明日の俺は、生まれ変わる」
力強く宣言し、そのまま眠りについた。
――翌朝。
奇跡的に、アラーム一発で目が覚める。
時計は5:00ちょうど。
「……勝った」
ゆっくりと起き上がり、カーテンを開ける。
朝日が差し込み、部屋を柔らかく照らす。
「これが……成功者の景色か」
キッチンで白湯を用意し、湯気を見つめながら一口。
「完璧だ……」
机に向かい、本を開く。
「まだ世界が眠っているこの時間……ノイズは一切ない」
「今の俺のクリエイティビティは……最高潮だ」
だが、その“最高の状態”は長くは続かなかった。
時計は5:15。
ふと、ある思考が頭をよぎる。
「……待てよ」
「睡眠不足は、パフォーマンスの最大の敵では?」
急に理性的な顔になるマサシ。
「トップ企業は“パワーナップ”を推奨している……」
「ここで一度、脳を回復させれば……その後の効率は爆発的に上がるはずだ」
論理は完璧だった。
「これはサボりじゃない……戦略的休息だ」
そう言い切ると、迷いなく布団へ戻る。
アラームは――かけない。
「短時間なら問題ない……むしろ必要だ……」
そのまま、再び眠りへ。
――次に目が覚めたとき。
部屋はすでに明るく、空気も完全に“昼”だった。
「……あれ?」
時計を見る。
11:00。
一瞬、思考が止まる。
「……いや、これは……」
スマホを手に取り、睡眠アプリを確認。
そこに表示されていたのは、無慈悲な記録。
――本日の朝活時間:15分
――パワーナップ延長時間:5時間45分
――結果:通常の休日より遅く起床
「……増えてるじゃねぇか……」
膝から崩れ落ちるマサシ。
完璧なはずだった朝活は、わずか15分で終了していた。
「……違う……これは失敗じゃない」
必死に言い訳を探す。
「長時間睡眠は……脳の完全回復……」
「つまり……俺は今、万全の状態……!」
だが、その体はどこか重い。
そして気づけば、スマホはすでに動画アプリを開いていた。
「……午後から本気出す」
その言葉を残し、再びベッドへ倒れ込むマサシ。
こうして彼の“究極の朝活”は――
開始15分で終了し、過去最長の二度寝へと進化したのだった。


