オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第10話
二次面接を終えてから数日。
テツヤの生活は、いつも通りに戻っていた。
昼は工場、夜はコンビニ。
変わらない日常。
だが、確実に違うことが一つだけあった。
(……待ってる)
結果を。
それだけで、時間の流れが妙に長く感じる。
スマホを開く回数が増える。
通知が来るたびに、一瞬だけ心が跳ねる。
しかし、そのほとんどはどうでもいい通知だった。
(……まだか)
ため息をつきながら、画面を閉じる。
以前の自分なら、こういう時間はただ流されていた。
だが今は違う。
「待っている」という感覚そのものが、少し重たい。
ある日の昼休み。
工場の隅で、テツヤは弁当を食べながらぼんやりしていた。
周囲では同じように働く人たちが、いつも通りの会話をしている。
(このままここにいるのかな……)
ふと、そんな考えが浮かぶ。
以前なら、その考えはすぐに消していた。
でも今回は違った。
(……いや、違うな)
首を横に振る。
ここにいることが悪いわけではない。
ただ、自分は「選ぼうとしている」。
その感覚が、少しだけ自分を変えていた。
その日の夜。
コンビニの休憩室で、スマホを見ていたときだった。
一通のメール。
件名を見た瞬間、指が止まる。
(……来た)
ゆっくりと開く。
文章は簡潔だった。
「この度は選考にご参加いただき、誠にありがとうございました――」
その先を読む。
一瞬、時間が止まる。
結果は――
最終面接への案内だった。
「……は?」
思わず声が漏れる。
不採用でもない。
合格でもない。
“次がある”。
それが一番予想していなかった答えだった。
(……まだ終わってないのか)
胸の奥で、何かが動く。
安心とも違う。
不安とも違う。
ただ、「続く」という感覚。
その重さと、少しの高揚。
スマホを見つめたまま、しばらく動けなかった。
(……ここまで来たんだな)
小さくつぶやく。
気づけば、自分はかなり遠くまで来ていた。
何も考えずに過ごしていた日々。
流されていた時間。
そこから、少しずつ。
考えて、動いて、失敗して。
それでも続けてきた。
その結果が、今ここにある。
(……でも、まだ途中か)
スマホをポケットにしまう。
終わりではない。
むしろ、ここからが本番なのかもしれない。
休憩室を出ると、夜の店内はいつも通りだった。
レジの音。
ドアの開閉音。
お客の足音。
何も変わらない。
でも、テツヤの中では確実に変わっている。
(……やるしかないな)
その言葉は、もう自然に出てきた。
帰り道。
夜の空気は少し冷たく、でもどこか心地いい。
街の灯りが、いつもよりはっきり見える。
(最終面接か……)
考えるほどに、緊張は増していく。
でも同時に、不思議と逃げたいとは思わなかった。
むしろ――
(ちゃんとやりたい)
そう思っている自分がいた。
以前の自分では考えられなかった感情だった。
部屋に戻り、テーブルに座る。
ノートを開く。
これまで書いてきた言葉たちが、目に入る。
拙い言葉。
迷いの跡。
でも、それは全部、自分が考えてきた証だった。
ペンを持つ。
(……もう一回、ちゃんと考えるか)
新しいページをめくる。
「最終面接」
そう書き出す。
まだ答えは出ていない。
でも――
確実に前には進んでいる。
静かな夜の中で、テツヤはまた一歩、踏み出していた。

