【フリーター奮闘記】テツヤ成り上がり|第9話|試される理由

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二次面接の日が近づくにつれて、テツヤの中にある感情は少しずつ変わっていった。

最初に通過連絡を受けたときの高揚感は、徐々に現実的な重さへと変わっていく。

(……ここからが本番だよな)

そう思えば思うほど、気持ちは引き締まる。

一次面接は、ある意味「勢い」だった。
だが、二次面接は違う。

“本当にこの人を採用するか”を見られる場。

そう考えると、自然と緊張が増していく。

工場での作業中も、コンビニの夜勤中も、頭の片隅には常に面接のことがあった。

(何聞かれるんだろうな)
(ちゃんと答えられるか……)

不安が、じわじわと広がる。

それでも今回は逃げない。

テツヤはノートを開き、これまで以上に準備を始めた。

「なぜこの会社なのか」
「これからどうなりたいのか」
「自分の強みは何か」

答えは簡単には出ない。

書いては消し、考えては止まる。

それでも、前とは違う。

分からないなりに、逃げずに向き合っている。

ある夜。
コンビニの休憩中、ふと鏡に映った自分を見る。

少し疲れた顔。
でも、以前よりもどこか引き締まっている。

(……やるしかないか)

小さくつぶやく。

その言葉には、もう迷いはなかった。

面接当日。

スーツに袖を通す手が、わずかに震える。

玄関の鏡の前に立ち、深く息を吸う。

(大丈夫だろ)

根拠はない。
それでも、自分に言い聞かせる。

会場に向かう電車の中。

周囲の人たちはいつも通りの日常を過ごしている。

それが逆に、テツヤの緊張を際立たせた。

(……逃げるなよ)

自分の中で、何度も繰り返す。

会議室に通される。

前回よりも静かな空気。
面接官の数も多い。

(……きたな)

椅子に座り、背筋を伸ばす。

「では、よろしくお願いします」

面接が始まる。

最初の質問は、予想していたものだった。

「志望動機を教えてください」

テツヤはゆっくりと口を開く。

言葉は、すぐには出てこない。

一瞬、間が空く。

(……落ち着け)

心の中で自分に言い聞かせる。

そして、続ける。

準備してきた言葉。
でも、それをそのままなぞるのではなく、自分の言葉として話す。

途中で詰まる。
言い直す。

それでも、止まらない。

次の質問。

「これまでの経験で、困難だったことは?」

一瞬、頭が真っ白になる。

準備していた内容とは少し違う。

(……どうする)

逃げるか、誤魔化すか。

一瞬だけ迷う。

だが――

(いや、ちゃんと話す)

思い出す。

工場での単調な仕事。
コンビニでの夜勤。
何も変わらなかった日々。

それを、そのまま話す。

かっこいい話ではない。
でも、嘘ではない。

面接官の表情は変わらない。
評価は分からない。

それでも、テツヤの中には一つの感覚があった。

(……ちゃんと話してる)

面接が終わる。

部屋を出た瞬間、大きく息を吐く。

「……はぁ」

全身の力が抜ける。

結果は分からない。
手応えもはっきりしない。

でも、一つだけ確かなことがあった。

(逃げなかった)

それだけで、十分だった。

帰り道。

街の景色はいつも通り。

でも、テツヤの中では何かが確実に変わっていた。

前は、ただ流されていた。

今は、自分で向き合っている。

それだけで、見える景色が少し違う。

「……まあ、悪くないか」

小さくつぶやく。

合格するかどうかは分からない。

それでも――

「ここまで来た」という実感があった。

夜は静かに更けていく。

次の結果がどうなるかは分からない。

それでも、テツヤは思う。

(……次も、ちゃんとやる)

その言葉は、もう揺れていなかった。