オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ |テツヤの成り上がり|第7話
面接を終えてからの数日間は、妙に長く感じた。
やることは変わらない。
昼は工場、夜はコンビニ。
それでも、頭のどこかに常に残っている。
(……どうなったんだろうな)
スマホを何度も確認する。
通知が来ていないか、無意味に画面を開く回数が増えていた。
以前なら、「どうせダメだろ」と決めつけていた。
だから、ここまで気にすることもなかった。
でも今回は違う。
「ちゃんとやった」という実感があるからこそ、結果が気になる。
ある日の夕方。
工場の休憩中、スマホが震えた。
画面には、あの会社の名前。
一瞬、呼吸が止まる。
(……来た)
指先が少し震える。
周りの音が遠くなる。
機械の音も、人の声も、何も入ってこない。
ゆっくりと通知を開く。
「選考結果のご連絡」
その文字だけで、心臓が強く鳴る。
深く息を吸う。
そして、画面をタップした。
――結果は、不採用だった。
「……そっか」
思ったよりも、声は落ち着いていた。
ショックがないわけではない。
でも、前回とは明らかに違う。
あの時のような「何もできなかった悔しさ」ではない。
今回は、「やった上での結果」だった。
しばらく画面を見つめたまま、動けなかった。
やがて、もう一度メールを読み返す。
そこには、短い一文が添えられていた。
「今回はご縁がありませんでしたが、選考過程において誠実にご対応いただき、ありがとうございました。」
どこにでもある文章。
それでも、少しだけ救われる気がした。
(……ちゃんと見てもらえてたんだな)
ほんの少しだけ、報われた気がした。
スマホを閉じ、顔を上げる。
工場の天井は相変わらず無機質だ。
でも、前とは違って見えた。
「……よし」
小さくつぶやく。
落ち込んでいないわけではない。
悔しさもある。
でも、それ以上に感じていたのは、
「まだやれる」という感覚だった。
帰り道。
いつもの街を歩く。
以前なら、不採用は「終わり」だった。
「やっぱり無理だ」と、そこで止まっていた。
でも今は違う。
(……次、どうするか)
自然と、その考えが浮かぶ。
アパートに戻ると、テツヤはすぐにノートを開いた。
今回の面接を振り返る。
良かったところ。
詰まったところ。
うまく言えなかった部分。
一つ一つ書き出していく。
(ここ、もっとちゃんと話せたな)
(ここは準備不足だった)
反省点はある。
でも、それは「次につながるもの」だった。
「……悪くなかったな」
小さく笑う。
不採用だったのに、どこか前向きだった。
スマホを開き、再び求人サイトを見る。
今度は迷いが少ない。
前回よりも、自分の軸が少しだけ見えている。
(……次、行くか)
自然と指が動く。
応募ボタンを押す。
前とは違う。
これは「やけ」でも「逃げ」でもない。
ただ、「続けている」という感覚だった。
スマホを置き、背もたれに体を預ける。
天井を見上げる。
何も変わっていない。
部屋も、生活も、現状も。
それでも、テツヤの中では確実に変わっていた。
不採用だった。
でも、止まらなかった。
それだけで十分だった。
「……まあ、悪くないな」
静かにつぶやく。
この一歩は小さい。
でも、確実に前に進んでいる。
テツヤは目を閉じる。
次は、どうなるか分からない。
それでも――
「やれば、変わるかもしれない」
その感覚だけは、もう消えていなかった。


