オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第32話
ある週末。これまでのキャンプや朝活の失敗を経てなお、パパの向上心は衰えるどころか加速していた。
「次は“家族のため”だ」
そう高らかに宣言したパパは、庭に“理想のウッドデッキ”を作ることを決意する。
「家族の絆は、頑丈な基礎から始まる!」
その言葉とともに、今回も例によって“形”から入るパパは、驚異的なスピードで機材を揃えていく。
プロ仕様の充電式インパクトドライバ、精密な水平を保証するレーザー墨出し器、さらには用途がやや不明な北欧製の高級木材保護塗料まで購入。
気がつけばガレージは、もはや職人の工房と化していた。
「パパ、プロの大工さんみたい!」
子どもたちの純粋な称賛に、パパは満足げに頷く。
「当然だ。これは遊びではない。“建築”だ」
しかし、その情熱はやがて予想通りの方向へと逸れていく。
数日後。
パパはまだ一枚も木材を組んでいなかった。
代わりに彼が没頭していたのは、設計だった。
簡単なラフスケッチで済むはずの計画は、いつの間にかCADソフトによる3D設計へと進化。
基礎の耐荷重計算、地盤との接地圧、木材の収縮率、接合部の応力分散……。
すべてを数値で管理し始める。
「接合部の収縮誤差は0.5ミリ以内……これがプロの流儀だ」
キーボードを叩きながら、完全に研究者の目になっているパパ。
深夜、モニターに映る精密な設計図を見つめながら、静かに呟く。
「……完成した」
「この時点で、このウッドデッキは“建築学的には完成している”」
誰もいないリビングに、静かな達成感だけが漂っていた。
――そして迎えた施工初日。
満を持して、ついに現場へ。
木材を整然と並べ、工具を配置し、パパはゆっくりとインパクトドライバを構える。
「ここからが……現実だ」
一本目のネジを打ち込もうと、腰を落としたその瞬間――
「グキッ!!」
鈍い音とともに、全身が硬直する。
「うおおおぉ……!!」
連日の設計作業と、無駄に重い工具の扱いで酷使された腰が、ついに限界を迎えた。
そのまま前のめりに崩れ落ちるパパ。
だが、思考だけは止まらない。
「……違う……これは失敗じゃない」
芝生に倒れながら、ゆっくりと呟く。
「今の俺にとって、この地面の硬さを感じること……それ自体が“基礎工事”だ」
完全に概念へと逃避するパパ。
一方その頃――
「ねえこれ、秘密基地にしようよ!」
子どもたちはパパが並べた木材を使い、自由に遊び始める。
レジャーシートを広げたママも合流し、庭は一気にピクニック空間へ。
笑い声が響く。
その光景を、地面に倒れたまま見つめるパパ。
「……これこそが、計算を超えた家族の絆」
「究極の基礎工事……」
目にうっすら涙を浮かべながら、どこか満足げに呟く。
こうしてパパの“理想のウッドデッキ”は――
一本のネジも打たれることなく、家族の遊び場として先に完成した。
※なお、この後パパは腰を悪化させ、数日間動けなくなった。


