オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第29話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「スマホを手放したいのに、結局スマホが気になってしまう人間の心理」です。
「成功者は“空白の時間”を持っている。」
そんな記事を読んだマサシは、
「情報に支配される側ではなく、支配する側になる!」
と決意し、デジタルデトックスを開始します。
しかも今回も”形から入る”マサシらしく、スマホを南京錠付きの木箱へ厳重に封印。
この徹底ぶりが、最初の笑いどころです。
しかし、静かな時間を手に入れたはずなのに、
「明日のシフト確認したっけ?」
「天気は?」
「SNSの”いいね”は?」
と、次々に雑念が襲いかかります。
極めつけは、
「最悪、大統領から緊急連絡が来てるかもしれない」
という、ありえない理由まで思いついてしまうところ。
そして、
「これはデトックスじゃない。リスク管理だ。」
という、いつもの”都合のいい理論”で自分を納得させる流れは、まさにマサシらしさ全開です。
鍵付きの箱を壊してまでスマホを救出したにもかかわらず、待っていたのはショート動画の無限スクロール。
最後には、
スクリーンタイム14時間30分
デジタルデトックス継続時間12分
という残酷すぎる結果が表示され、
「なんで増えてんだよ……」
というツッコミで締めくくられる流れは、この作品ならではのオチになっています。
「スマホを見ない」と決めた瞬間に、逆にスマホのことばかり考えてしまう——。
そんな現代人なら誰もが共感できる”あるある”を、テンポよく笑いへ昇華した一話です。
【本文】
休日。いつものようにベッドの上でゴロゴロしながらスマホを眺めていたマサシは、ふと目に入った一本の記事に手を止める。
「スマホ依存が脳を破壊する――成功者は“空白の時間”を持っている」
その一文に、マサシの目が見開かれる。
「……来たか」
またしても彼の中の“前向き変換スイッチ”が入る。
「現代人は情報に支配されている……だが俺は違う。意識的にデジタルから離れ、脳のパフォーマンスを最大化する側に回る……!」
勢いよく起き上がるマサシ。
「やるしかない……デジタルデトックスだ!」
その決断は早かった。
だが、今回もやはり“形”から入る。
わざわざネットで注文した南京錠付きの木箱を取り出し、スマホの電源をオフ。丁寧に中へ入れ、カチャリと鍵をかける。
「これで逃げ道はない……」
机の上には紅茶、そして本棚の奥から引っ張り出した難解な哲学書。
「これだ……ノイズのない世界。紙の匂い、静寂な時間……」
ページをめくりながら、満足げに頷く。
「俺の脳細胞が……活性化していく……!」
――その5分後。
目は文字を追っているが、内容は一切入ってこない。
――10分後。
指先がピクピクと震え始める。
「……待てよ」
突然、不安が頭をよぎる。
「明日のシフト……確認したっけ?」
「いや、それより……今日の天気は?」
「……さっきの投稿、いいね何件ついた?」
どんどん思考が逸れていく。
そしてついに、意味不明な発想に到達する。
「……最悪、大統領から緊急連絡が来てる可能性もある」
完全に末期だった。
額に冷や汗を浮かべながら、マサシは机の上の箱を見つめる。
「いや……これは試練だ……耐えろ……」
しかし次の瞬間、別の思考が割り込む。
「……有事の連絡確認は、社会人としての義務では?」
完璧な“言い訳”が完成した。
「仕方ない……これはデトックスじゃなく、リスク管理だ」
自分を納得させたマサシは、即座に行動に出る。
ガチャガチャ――
「開かねぇ!!」
鍵の存在を忘れていた。
そして数秒後。
ドンッ!!
箱は無惨にも破壊され、スマホは無事“救出”された。
「……ふぅ、危なかった」
安堵の表情でスマホを起動。
通知の嵐を高速で処理し、そのまま自然な流れでショート動画へ。
気づけばベッドに戻り、指は止まらない。
次々と流れる動画。
止まらないスクロール。
終わらない“あと1本だけ”。
そして夜。
暗い部屋の中、マサシの顔を青白く照らすスマホ画面。
そこに表示されたのは、無慈悲な数字だった。
――本日のスクリーンタイム:14時間30分
――デジタルデトックス継続時間:12分
しかも備考にはこう書かれている。
「※反動により、通常より深くネットに没入」
「……なんで増えてんだよ……」
天井を見つめながら呟くマサシ。
だが、その手はすでに次の動画へと伸びていた。
「……明日こそ本気出す」
そう決意しながら、再びスクロール。
その決意が守られたことは――
一度もなかった。
【作者コメント】
最近は「デジタルデトックス」という言葉をよく耳にします。
スマホから離れたり、SNSを見ない時間を作ったりすることは、確かに心や脳を休ませる効果があると言われています。
ただ実際にやってみると、
「通知は来ていないかな」
「何か重要な連絡を見逃していないかな」
「ちょっとだけ確認しよう」
そんな気持ちが次々と湧いてきます。
今回のマサシは、その”ちょっとだけ”を極端に描いたキャラクターです。
スマホを木箱に閉じ込めるという徹底ぶりも、結局は自分の言い訳によって数分で崩壊してしまいます。
そして、デトックスした反動で、以前より長くスマホを見続けてしまうという結末も、意外と経験のある方は少なくないのではないでしょうか。
便利なスマホは、私たちの生活に欠かせない存在です。
だからこそ、「完全に断つ」のではなく、無理なく付き合うことが一番大切なのかもしれません。
もしこの作品を読んで、
「スマホを置いたはずなのに、5分後には探していた」
「通知がないのに画面を開いてしまう」
そんな経験を思い出して笑っていただけたら、とても嬉しいです。


