オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第5話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「人と比べてしまう夜」です。
久しぶりに同級生の亮と好美と居酒屋で再会したマサシ。
仕事の愚痴をこぼしながらも、どこか充実した表情で話す二人の姿を前に、マサシは静かに相槌を打ちながら耳を傾けます。
会話には加わっているものの、自分だけが違う世界にいるような感覚――。
「二人はちゃんと”社会”で生きてるんだな。」
その何気ない一言が、マサシの胸に重くのしかかります。
それでも帰り道では、「比べる必要はない」「人には人のペースがある」と、自分自身を励ましながら前を向こうとする姿が描かれます。
しかし、最後に待っているのは思わぬオチ。
スマホの万歩計に表示された「今日の歩数 500歩」。
「今日は、心が忙しかったな」という締めくくりは、歩いた距離ではなく、心の中で何度も迷い、考え続けた一日だったことを象徴しています。
笑いの中にも切なさがあり、「人と比べてしまう気持ち」を誰もが少しだけ思い出す、共感度の高い一話となっています。
【本文】
ある日の夜、マサシは久しぶりに同級生の亮と好美と三人で軽く飲みに行くことになった。場所は駅前の小さな居酒屋。仕事帰りの人たちで賑わう店内で、三人はジョッキを持ち上げながら再会を喜ぶ。
「いやー最近残業多くてさ」
亮は苦笑いしながらビールを一口飲む。
「この前のプロジェクトがさ、なかなか大変でさ」
スーツ姿の亮は、忙しいと言いながらもどこか充実しているように見える。愚痴を言っているはずなのに、仕事の話には確かな実感があった。
一方、好美もグラスを持ちながら笑う。
「私も新しいチームに入ったばかりでね。覚えること多くて大変」
そう言いながらも、どこか楽しそうだった。忙しさを笑いながら話せるのは、それだけ前に進んでいる証拠のようにも見える。
マサシは二人の話を聞きながら、静かに相槌を打っていた。
「へぇ、そうなんだ」
「大変そうだな」
会話には参加している。
しかし、どこか少しだけ距離がある。
仕事の話、将来の話、職場の人間関係。
そのどれもが、自分の今いる場所とは少し違う世界の話のように感じられた。
二人が笑いながら話している横で、マサシはふと思う。
――二人はちゃんと「社会」で生きてるんだな。
そんな考えが頭をよぎる。
グラスを持つ手が、ほんの少しだけ重く感じた。
気づけば会話はどんどん進んでいく。
亮と好美は楽しそうに話し続けている。
マサシはその様子を見ながら、どこか取り残されたような感覚を覚えていた。
――俺だけ、時間が止まってるみたいだな。
そんな思いが胸の奥に浮かぶ。
やがて店を出て、夜の街へ。
別れ際、亮が手を振る。
「また飲もうな!」
好美も笑顔で頷く。
「うん、またね」
二人はそれぞれの帰り道へと歩いていった。
一人になったマサシは、夜道をゆっくり歩く。
少し冷たい夜風が頬に当たる。
しばらく歩いたあと、マサシは小さく拳を握る。
「……比べる必要はない」
「人には人のペースがある」
自分に言い聞かせるように、いつもの前向き変換をする。
「俺は俺の道を行く!」
そうつぶやきながら歩き続けるマサシ。
しかし帰宅して部屋のベッドに座り、ふとスマホを見ると、万歩計の画面が表示されていた。
――今日の歩数 500歩
マサシはその数字をしばらく見つめる。
そして静かにつぶやいた。
「……今日は、心が忙しかったな」
部屋の中には、夜の静けさだけが広がっていた。
【作者コメント】
人は、自分では気づかないうちに誰かと比べてしまうものです。
同級生と再会すると、その比較はより鮮明になります。
昇進した人。
忙しく働く人。
新しい環境で頑張っている人。
その姿を見るだけで、「自分は何をしているんだろう」と考えてしまうことは、決して珍しいことではありません。
今回のマサシも、亮と好美を羨ましく思いながら、それを表には出さず、笑顔で会話を続けました。
そして帰り道では、「人には人のペースがある」と自分を励まします。
この言葉は決して間違いではありません。
ただ、本当に前を向くためには、自分のペースを信じながらも、一歩ずつ前へ進もうとする勇気も必要なのだと思います。
最後の「今日の歩数500歩」というオチには、体はあまり動いていなくても、心は一日中走り続けていたという意味を込めました。
人と比べて落ち込んだ日も、焦ってしまった日も、その時間が無駄になるとは限りません。
迷い、悩み、立ち止まることもまた、人生の大切な一歩だからです。
『フリーター奮闘記』は、成功だけを描く物語ではありません。
悩みながらも、自分らしい一歩を探し続ける人の物語です。
これからもマサシが現実と向き合い、小さな失敗や葛藤を重ねながら少しずつ成長していく姿を、温かく見守っていただけたら嬉しいです。


