オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第4話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「優しさが一番心に刺さる瞬間」です。
久しぶりに再会した高校時代の知り合い・好美。
「最近どうしてるの?」という何気ない会話から始まり、マサシは今の自分をうまく取り繕いながら答えます。しかし、好美は責めることも、詮索することもなく、ただ優しく微笑みながら「マサシくんって、昔からちゃんと考えてそうだもんね」と声をかけます。
その言葉に悪意は一切ありません。むしろ励まそうとする気持ちから出た、温かい一言です。
だからこそ、その優しさが今のマサシには何よりも痛く響きます。
さらに別れ際の「無理しすぎないでね」という気遣いの言葉が追い打ちとなり、マサシは心の中で「大ダメージ…」と静かに打ちのめされます。
夜、一人きりの部屋で今日の出来事を思い返し、「優しさって…攻撃力高いな…」とつぶやくラストシーンは、笑えるようでどこか切なく、多くの人が共感できる場面ではないでしょうか。
誰かに厳しく否定されるよりも、何気ない優しさの方が、自分の現実と向き合わされることがある――そんな人の心の機微を描いた一話です。
【本文】
ある日の夕方、公園の近くの道を歩いていたマサシは、ふいに聞き覚えのある声に呼び止められる。
「マサシくん? 久しぶり!」
振り向くと、そこに立っていたのは高校時代の知り合い・好美だった。
昔と変わらない明るい笑顔に、マサシは一瞬言葉を失う。
「あ…うん、久しぶり…」
思わずぎこちない返事をしてしまうマサシ。
久しぶりの再会に、二人はそのまま並んで少しだけ歩きながら話をすることになった。
「最近どうしてるの?」
何気ない質問。
しかしマサシにとっては、地味に答えづらい問いだった。
一瞬の沈黙のあと、マサシは少し視線をそらしながら答える。
「まぁ…ボチボチかな」
「今はバイトとかしながら、いろいろ考えてる感じ」
曖昧で便利な言い方だった。
本当は“いろいろ考えている”というより、“なんとなく日々を過ごしている”に近いのだが、そこはうまくぼかす。
しかし好美は、特に深く追及することもなく、優しく微笑んだ。
「そっか」
「マサシくんって、昔からちゃんと考えてそうだもんね」
その言葉は、とても柔らかく、まったく悪意もない。
むしろ励ましてくれているような言葉だった。
――なのに。
マサシの胸に、まるで矢が刺さったような感覚が走る。
「グサッ」
心の中でそんな音が響いた気がした。
“ちゃんと考えてそう”
その評価が、妙に痛かった。
実際の自分は、そこまでしっかり考えているわけでもない。
むしろ、目の前の現実から少し目を逸らしながら過ごしているだけだ。
だからこそ、その優しい言葉が、かえって胸に刺さる。
しばらく歩いたあと、分かれ道に差しかかる。
「じゃあ、私こっちだから」
好美は笑顔で手を振る。
そして最後に、少しだけ真面目な顔になって言った。
「無理しすぎないでね」
その一言が、またしてもマサシの心に突き刺さる。
「大ダメージ…」
表情には出さないものの、内心ではかなりの衝撃だった。
好美が去っていく夕暮れの道。
マサシはしばらくその場に立ち尽くす。
夜。
帰宅したマサシは、ワンルームの部屋のベッドに倒れ込み、ぼんやり天井を見つめていた。
今日の出来事を思い返す。
亮の言葉。
好美の言葉。
どちらも悪意はない。
むしろ優しい言葉ばかりだ。
それなのに、なぜか心にダメージが残っている。
マサシは小さくつぶやいた。
「優しさって…」
「攻撃力高いな…」
静かな部屋の中で、その言葉だけがぽつりと響いていた。
【作者コメント】
人は厳しい言葉よりも、優しい言葉に傷つくことがあります。
今回の好美は、マサシを励まそうとしていただけでした。
「ちゃんと考えてそう。」
「無理しすぎないでね。」
どちらも相手を思いやる、ごく自然な言葉です。
しかし、自分自身に少し後ろめたさや迷いがあると、その優しさが鏡のように本当の自分を映し出してしまいます。
だからこそマサシは、何気ない一言に大きなダメージを受けました。
この作品では、誰かが悪者になるわけではありません。
亮も、好美も、ただ普通に接しているだけです。
それでもマサシの心は揺れ動く。その姿は、夢と現実の間でもがく多くの人の姿と重なるのではないでしょうか。
今回の教訓は、
「本当に心に響くのは、責める言葉ではなく、思いやりのある言葉かもしれない。」
ということです。
人は優しさに救われることもあれば、優しさによって自分を見つめ直すきっかけを与えられることもあります。
『フリーター奮闘記』は、そんな何気ない日常の出来事を通して、マサシが少しずつ現実と向き合い、成長していく物語です。
これからも、笑いあり、共感あり、ときどき胸が締め付けられるようなマサシの日々を、温かく見守っていただけたら嬉しいです。


