オリジナルWeb漫画:サラリーマン奮闘記シリーズ 第2話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「変化を受け入れる勇気」と「紙にこだわる課長」です。
「画面では頭に入らない」「紙の重さが責任の重さだ」と言い切る斎藤課長。ペーパーレス化が進む会社の中で、誰よりも大量の紙資料を抱える姿は、時代の流れに逆らう象徴のようです。
しかし、いざ重要な資料が見当たらなくなると、その”安心”だったはずの紙が大きな弱点に。会議開始まで残りわずかという緊迫した状況で、タケルは共有クラウドから資料を瞬時に表示し、危機を救います。
「紙が悪い」「デジタルが正しい」という単純な話ではなく、それぞれの良さを理解しながら、時代に合った働き方を考えるきっかけになる一話です。
最後に、「その紙を失くしたのは誰なんですか……」と心の中でつぶやきながら胃薬を飲むタケルには、思わず共感してしまいます。
【本文】
会社では最近、業務効率化の一環としてペーパーレス化が進んでいた。会議資料も見積書もすべてクラウド上で共有され、検索や更新も瞬時に行える。若手社員たちは当然のようにタブレットやノートPCで資料を確認し、必要な情報をその場で呼び出していた。
しかし、そんな流れに真っ向から逆らう人物がいた。
――斎藤課長である。
斎藤課長はモニターを睨みつけながら言う。
「画面じゃ頭に入らん!」
「俺の若い頃はな、書類の“重さ”が責任の重さだったんだ!」
そう言って、すべての資料を紙で出力させるのが彼の流儀だった。結果、被害を受けるのは部下のタケルである。
「タケル、これ全部印刷しておけ!」
「両面じゃなくて片面だ!読みづらい!」
「ホチキスは左上だぞ!」
気づけばタケルのデスクには、斎藤課長専用の資料が山のように積み上がっていた。社員たちはその異様な光景を密かにこう呼んでいた。
“紙の塔”。
そんなある日の午後、突然重役会議が開かれることになった。斎藤課長は得意げに分厚い資料の束を抱え、会議室へ向かう。
「やっぱり紙だ。これが安心感というものだ」
しかし数分後、斎藤課長が血相を変えて戻ってきた。
「おいタケル!」
「さっきの資料、一番重要なページがないぞ!」
「見積もり総額のページだ!」
会議開始まで残り3分。
斎藤課長はタケルを睨みつける。
「お前が入れ忘れたんだろ!」
完全な責任転嫁だった。
タケルは一瞬目を閉じる。
だが次の瞬間、静かにノートPCを開いた。
「課長、ご安心ください」
「先日導入された共有クラウドに、すべて保存されています」
そして会議室のプロジェクターへ接続すると、スマートフォンで操作しながら言った。
「検索機能で該当ページを表示します」
数秒後、巨大なスクリーンに見積もり総額のページが映し出される。
会議室がざわついた。
「おお、便利だな」
「今の時代はこうでなくちゃ」
「紙より早いじゃないか」
重役たちから称賛の声が上がる。
斎藤課長は黙ったまま、額の汗をぬぐうしかなかった。
会議後。
斎藤課長は腕を組みながら言う。
「ふん……まあ今回は機械に頼ってやっただけだ」
「だがな」
「紙の温かみこそが信頼を生むんだ」
そう言い残して去っていく。
その背中を見送りながら、タケルは静かに思う。
(……その紙を失くしたのは誰なんですか)
そしてポケットから胃薬を取り出し、水で流し込む。
こうして今日も、タケルの小さなストレスと、小さな正義が静かに積み重なっていくのだった。
【作者コメント】
仕事の進め方は、時代とともに大きく変わっています。
以前は紙の資料が当たり前でしたが、今ではクラウドやタブレットを活用する会社も増え、必要な情報をすぐに共有・検索できる環境が整いつつあります。
もちろん、紙には「一覧性が高い」「書き込みやすい」といった良さがあります。一方で、保管場所が必要だったり、差し替えや紛失のリスクがあったりと、課題も少なくありません。
今回の斎藤課長は、長年慣れ親しんだ仕事のスタイルを大切にするあまり、新しい仕組みに抵抗を感じています。それ自体は決して悪いことではありませんが、便利なものを上手に取り入れる柔軟さも、これからの時代には欠かせないのかもしれません。
そして、危機的な場面でも慌てず冷静に対応したタケルの姿は、「新しい知識や技術は、誰かを助けるために使ってこそ価値がある」ということを教えてくれます。
働き方が変わっても、本当に大切なのは「紙」か「デジタル」かではなく、相手に正確な情報を届け、仕事を円滑に進めること。
そんなメッセージを、このエピソードに込めました。
次回も、小さな勇気と確かな成長を積み重ねていくタケルの奮闘を、ぜひお楽しみください。


