【フリーター奮闘記】第23話『スリープハッカー(睡眠の最適化)』

オリジナルマンガ

ある日、マサシはネットの記事を真剣な表情で読み込んでいた。

タイトルは――
「成功者は睡眠をハックする」

記事にはこう書かれている。

・睡眠の質が人生の質を決める
・最高のパフォーマンスは最高の休息から生まれる
・睡眠は“管理”できる

それを読んだマサシの目が輝いた。

「そうか……」

「現代人は睡眠不足なんだ」

「俺は違う」

マサシは拳を握りしめる。

「俺は“スリープハッカー”になる」

その日の帰り道、マサシは家電量販店へ直行した。

睡眠改善コーナーを物色し、次々とガジェットをカゴへ入れていく。

・睡眠リズムを管理するリストトラッカー
・自然な光で目覚めるスマートランプ
・完全遮光のスリープマスク

店員が説明する。

「当店の商品は、あくまで睡眠の“補助”でして……」

しかしマサシは自信満々だった。

「いや、十分だ」

「これで俺は、完璧な7時間睡眠を手に入れる」

その夜。

マサシは意気揚々とベッドに入った。

腕にはリストトラッカー。
目にはスリープマスク。
枕元にはスマートランプ。

「最先端の睡眠工学……」

「最高の休息が、今ここに完成する」

そうつぶやきながら眠りにつく。

しかし――

6時間後。

突然、部屋が明るくなる。

チカチカチカ……

スマートランプが激しく点滅していた。

さらに――

ビービービー!!

リストトラッカーがけたたましいアラームを鳴らし始める。

マサシは飛び起きた。

「な、なんだ!?」

どうやらガジェットが不具合を起こしたらしい。

眩しい光。

鳴り止まないアラーム。

完全に叩き起こされるマサシ。

汗だくになりながらガジェットを外す。

「くそ……」

「店員が言ってた“補助”って、こういう意味か……」

その日の昼。

マサシはコーヒーを片手に街を歩いていた。

目の下には濃いクマ。

足取りはフラフラ。

「……睡眠をハックする前に」

「俺の体力がハックされてる」

完全に寝不足だった。

そしてその夜。

マサシは部屋に帰るなり、ベッドへ倒れ込む。

ガジェットは一切使わない。

リストトラッカーも外す。

スマートランプも消す。

ただ布団に潜り込む。

数秒後――

グゥ……

よだれを垂らしながら、泥のように眠り始めた。

深夜。

マサシはぼんやりつぶやく。

「……やっぱり」

「最強の睡眠工学は」

「疲れて気絶することだな」

こうしてマサシは、
身体を酷使して眠るという原始的な真理にたどり着いたのだった。

そして深夜。 極限まで疲労困憊したマサシは、ガジェットなど一切使わずにベッドへ倒れ込み、よだれを垂らしながら泥のように眠るのだった。 「…やっぱり最強の睡眠工学は、疲れ気絶することだな」と、身をもって究極の真理(?)へとたどり着く。