オリジナルWeb漫画:サラリーマン奮闘記シリーズ 第7話
【今回の見どころ】
今回のテーマは、「見た目への投資は、時として最大のギャンブルになる」です。
飲み会の自腹やサーバー復旧騒動で極貧生活に突入したはずの斎藤課長。
ところが月曜日に現れた課長は、まるで別人のようなフサフサの黒髪で堂々と登場します。
「男は身だしなみだ!」
と得意満面ですが、部下たちの頭に浮かぶのは「なぜ今、その出費?」という当然の疑問。
大事な商談を前に、若返りを狙った”3万円の激安通販カツラ”という時点で、不穏な空気は漂っています。
そして運命の瞬間。
「商談前は換気が大事だ」と窓を開けたその時、一羽のカラスが急降下!
まさかのカツラを巣材(?)と勘違いし、そのまま空高く持ち去ってしまいます。
残されたのは、光り輝く頭頂部と、商談開始前に心が折れた課長だけ。
「俺の3万円がー!!」
という絶叫とともに幕を閉じる、シリーズ屈指の勢いあるギャグ回です。
最後にタケルが心の中でつぶやく
「商談、開始10秒で終了ですね」
という一言が、この作品をきれいに締めくくっています。
【本文】
先週、斎藤課長は立て続けに二つの大きな出費をしていた。
ひとつは例の強制飲み会で発生した12万8千円の自腹会計。
もうひとつは、社内サーバーの不具合を無理やり自分で触った結果、逆に壊してしまい発生した修理費だった。
その影響で、今月は極貧生活に突入したはずだった。
――少なくとも、部下たちはそう思っていた。
しかし月曜日の朝。
出社してきた斎藤課長を見て、フロアの空気が一瞬止まる。
そこに立っていた斎藤の頭には――
不自然なほどフサフサの黒髪。
しかも、ツヤツヤで若々しい。
先週までの頭頂部とは、まるで別人だった。
「おはよう!」
斎藤は胸を張って言う。
「やはり男は身だしなみが重要だな!」
部下たちは言葉を失う。
ショウは小声でつぶやく。
「……課長って、こんな髪ありましたっけ?」
タケルは無言でその頭を見つめる。
(借金があるのに……)
(なぜそっちにお金を使ったんですか……)
その“髪”はどう見ても不自然だった。
頭のサイズよりわずかに大きく、境目が妙に浮いている。
それでも斎藤本人は気づいていないのか、やたらと機嫌がいい。
「今日は大事な取引先との商談だ」
「若々しい印象で契約を勝ち取るぞ!」
どうやらそのための3万円の激安通販カツラらしい。
会議前、斎藤は窓の近くへ歩く。
「商談前は換気が大事だ」
そう言って窓を開ける。
外から気持ちのいい風が吹き込む。
斎藤は満足そうに目を閉じる。
「ふう……いい風だ」
その瞬間だった。
空から黒い影が急降下する。
「カァー!」
大きなカラスだった。
カラスは一直線に斎藤の頭へ向かう。
次の瞬間。
ガシッ!
鋭い爪が、斎藤の黒いモジャモジャを掴んだ。
カラスはそれを「巣の材料」か「小動物」と勘違いしたらしい。
斎藤が絶叫する。
「うわああああ!!」
「俺の3万円(通販・激安)がー!!」
次の瞬間――
カツラはカラスに引き抜かれ、空へと舞い上がる。
窓の外で、黒い毛の塊がヒラヒラと遠ざかっていく。
フロアは静まり返る。
残されたのは――
つるりと輝く頭頂部。
斎藤は両手で頭を押さえ、その場に崩れ落ちる。
「返せぇぇぇ……」
涙声で空を見上げる斎藤。
その時、会議室のドアが開く。
取引先の担当者が入ってきた。
目に入ったのは、窓際で泣き崩れる男。
そして、やけに光る頭頂部。
タケルは静かに目を閉じる。
(……商談、開始10秒で終了ですね)
ショウは必死に笑いをこらえていた。
こうして斎藤課長の若返り作戦は、
たった一羽のカラスによって、空高く連れ去られていったのだった。
【作者コメント】
第一印象は大切です。
身だしなみを整えることも、ビジネスでは決して悪いことではありません。
しかし今回の斎藤課長は、その優先順位を少し間違えてしまいました。
借金を抱えながら若返りを目指し、しかも価格だけで選んだ激安カツラ。
その結果、商談前にすべてが空へ飛んでいくという、まさに漫画らしい結末になりました。
今回描きたかったのは、
「外見を取り繕うこと」と「本当の信頼を得ること」は違うということです。
人は見た目も大切ですが、それ以上に日頃の行動や誠実さが評価されます。
もし斎藤課長が部下や取引先から厚い信頼を得ていれば、たとえカツラが飛んでも笑い話で終わったかもしれません。
しかし普段の行いが積み重なっているからこそ、周囲は誰も助けることができませんでした。
もちろん、この作品はあくまでコメディです。
「そんなことある!?」と思いながら笑っていただけたら、それが一番嬉しいです。
『サラリーマン奮闘記』では、職場で起こる理不尽や失敗を少し大げさに描きながら、「人として大切なこと」をユーモアとともにお届けしています。
これからもタケル、ショウ、そして毎回どこかで自爆してしまう斎藤課長の奮闘(?)を、温かく見守っていただければ幸いです。


