オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第25話
休日の午後。
リビングでテレビを見ていたパパは、料理番組の特集にすっかり見入っていた。
画面の中では、有名シェフが本格的なスパイスカレーを作っている。
クミン、コリアンダー、ターメリック……色とりどりのスパイスが鍋の中で踊る様子に、パパの目がキラリと光った。
「……決めた。」
突然立ち上がるパパ。
「今日の夕飯は、パパが究極のスパイスカレーを作ってやる!」
家族が振り向く。
「市販のルーなんて邪道だ!」
完全に料理人の顔になっていた。
その勢いのままパパは高級スーパーへ向かい、見たこともない大量のスパイスと、大きなブロック肉まで買い込んで帰宅する。
袋の中には、色とりどりの瓶や袋がぎっしり。
「本物のカレーはな、スパイスから作るんだ。」
そう言ってエプロンを締め、キッチンに立つパパ。
しかし――
その作業は、どう見てもプロとは程遠かった。
スパイスを量るたびに粉が飛び散り、床やテーブルは黄色や赤の粉だらけ。
コンロ周りはターメリックで鮮やかな黄色に染まり、まるで現代アートのような惨状になっていく。
さらに鍋やボウル、フライパンを次々と使い始めたため、シンクには洗い物が山のように積み上がった。
キッチンはまるで戦場である。
そんな中、パパは鍋をかき混ぜながら不敵に笑う。
「ここで……隠し味だ。」
取り出したのはコーヒーとチョコレート。
「コクが出るんだ……!」
怪しい錬金術師のように材料を鍋へ投入していく。
数時間後。
鍋の中では、ぐつぐつと黒っぽいカレーが煮えたぎっていた。
空腹の限界を迎えた子供たちが、リビングから声を上げる。
「まだー?」
「お腹すいたー!」
そしてついに――
カレーが完成した。
パパは誇らしげに皿をテーブルへ運ぶ。
「どうだ!」
「何層にも重なるスパイスの奥深い香りがするだろう!」
しかしその色は、明らかに普通のカレーではない。
黒く、ドロドロしている。
家族は恐る恐るスプーンを口へ運ぶ。
その瞬間。
全員の動きが止まった。
口の中に広がるのは、強烈な辛さと複雑すぎる香り。
どこか漢方薬のような、不思議な苦味まで混ざっている。
子供たちは慌てて水を飲む。
「か、辛い……!」
ママは無言で席を立った。
そして数分後。
食卓には、甘口のレトルトカレーが並んでいた。
「レトルト、美味しいわね。」
家族が穏やかに食べる横で、パパは一人、汗だくになりながら自分のカレーを口へ運ぶ。
ボタボタと汗が落ちる。
それでもスプーンは止まらない。
「……うまい……」
そうつぶやきながら。
――そしてこの後、パパは一晩中トイレにこもることになるのだった。


