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【サラリーマン奮闘記】第15話「手柄泥棒の罠」

オリジナルマンガ

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「努力は隠せても、記録は隠せない。」です。

大型コンペに向け、何十時間もかけて企画書を作り上げたタケル。

市場調査から競合分析、プレゼン構成まで、一つひとつ積み重ねた努力が、ようやく形になりました。

ところが、その成果を見た斎藤課長は、

「あとは俺が最終調整して出しておく。」

と、いつもの”手柄泥棒”を発動。

しかし、その”最終調整”の内容は、

・タイトルのフォントを少し大きくする

・語尾を数か所修正する

たったそれだけ。

それにもかかわらず、

「ほぼ俺が作ったようなもんだな!」

という満足げな表情には、思わず苦笑してしまいます。

しかし今回の主役は、新しく導入されたクラウドシステム。

「変更履歴」という小さな機能が、静かに真実を記録していました。

誰が、いつ、どこを、どれだけ編集したのか。

その事実は決して消えることはありません。

部長の前で、

「全体の99.8%をタケルさんが作成」

「斎藤課長の作業時間は2分」

と読み上げられる場面は、この作品最大の見どころです。

最後には、これまで何度も飲み込んできた努力が初めて正当に評価され、

「この案件のリーダーは、お前に任せる。」

という部長の言葉につながります。

派手な復讐ではなく、

努力そのものが報われる結末。

だからこそ、シリーズ屈指の爽快感がある一話になっています。

そして今回も胃薬を飲みながら、

「これが、本当の勝利かもしれない。」

と静かに思うタケルの姿が、とても印象的でした。

【本文】

今週、タケルは大型コンペに向けた重要な企画書作成に追われていた。
市場調査、競合分析、コスト試算、プレゼン構成――すべてを一から組み立て、連日の残業で積み上げた時間は優に数十時間。ようやく完成した企画書は、誰が見ても説得力のある“勝てる資料”だった。

今回から社内では「クラウド型ドキュメント管理システム」が導入され、複数人で同時編集や共有が可能になっている。タケルは完成したドラフトをシステムにアップし、課長へ報告する。

「課長、企画書のドラフトができました。ご確認お願いします」

すると斎藤課長は、例の笑みを浮かべて言った。

「おう、ご苦労! あとは俺が“最終調整”して、俺の名前で部長に出しておく」

その一言で、タケルはすべてを悟る。

――手柄泥棒だ。

課長はPCを開き、タケルの企画書を操作し始める。
しかしやっていることは極めて軽微だった。

タイトルのフォントサイズを少し拡大。
語尾を「~である」から「~です」に数カ所修正。

それだけで満足げにうなずく。

「よし、これで完璧だ!」

「ほぼ俺が書き直したようなもんだな!」

そしてそのまま、自分の名前で部長へ提出してしまうのだった。

タケルは何も言わない。
ただ、静かに画面を見つめる。

(……何十時間もかけたのに)

怒りと悔しさがこみ上げ、胃がきりきりと痛む。

そのとき、画面右上に小さく光るアイコンに目が留まる。

「変更履歴」

(……なるほど)

クラウドシステムは、すべての編集を記録している。

誰が、いつ、どこを、どれだけ変更したか。

タケルは無言でその履歴を開き、ログ画面を表示したままそっと席を離れた。

数時間後。

フロアに、部長の怒声が響く。

「斎藤!!」

全員の視線が集まる。

「お前、この企画書を“自分が徹夜で書き直した”と言ったな!?」

斎藤課長の顔が固まる。

その隣には、総務のミユキがタブレットを手に立っていた。

「変更履歴および作業ログを確認しました」

淡々とした声で続ける。

「全体の99.8%をタケルさんが作成」

「斎藤課長の作業時間は……2分です」

フロアが静まり返る。

「変更内容は、フォントサイズ調整と軽微な文言修正のみ」

完全な証拠だった。

「なっ……なんでそんなことまで分かるんだぁぁ!」

課長は崩れ落ちる。

部長は冷たく言い放つ。

「他人の成果を奪うのは、明確なコンプライアンス違反だ」

「お前はこのプロジェクトから外れる」

そして、タケルに向き直る。

「素晴らしい企画だ」

「この案件のリーダーは、お前に任せる」

その言葉に、タケルは一瞬言葉を失う。

後輩のショウも、目を輝かせて言う。

「先輩、すごいです……!」

崩れ落ちたままの課長を背に、タケルは自席へ戻る。

引き出しからいつもの胃薬を取り出し、水で流し込む。

胃の痛みはまだある。

だが今日は、確かに違った。

胸の奥に、静かな達成感が残っている。

――努力は、消えない。

そしてシステムは、それを裏切らない。

タケルは小さく息を吐きながら、心の中でつぶやいた。

(……これが、本当の勝利かもしれない)

【作者コメント】

今回は、「努力は誰かが見ていなくても、必ずどこかに残っている」というテーマで描きました。

仕事をしていると、自分が何日もかけて作った資料や企画が、最後だけ少し手を加えられて、別の人の成果のように扱われる——そんな経験をされた方も少なくないと思います。

以前なら、「言った・言わない」「誰が作ったのか分からない」で終わってしまうこともありました。

しかし、クラウドサービスや共同編集システムが普及した現在では、作業履歴そのものが記録として残る時代になりました。

今回登場した「変更履歴」も、その一例です。

システムは、人を疑うためではありません。

誰が、どれだけ努力したのかを正しく残すための仕組みでもあります。

斎藤課長は「少し直しただけ」で成果を自分のものにできると思っていました。

しかし、記録は嘘をつきませんでした。

一方で、タケルは今回も誰かを陥れようとしたわけではありません。

事実をそのまま残し、システムが証明してくれることを信じただけです。

そして初めて、自分の努力が正当に認められました。

これまでの「小さな勝利」と違い、今回は努力が正式な評価につながった、本当の意味での勝利だったのかもしれません。

『サラリーマン奮闘記』では、職場で起こりそうな出来事を笑いに変えながら、働く人の努力や誠実さが報われる瞬間も大切に描いていきたいと思っています。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回も、タケルと個性豊かな仲間たちが繰り広げる”会社あるある”を、ぜひお楽しみください。