オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第3話
記録的な猛暑が続くある夏の日。
家の中に、娘・優子の厳しい声が響き渡る。
「今月の電気代、見てください!
エアコンは28度厳守です! 破ったら夕食抜きですからね!」
父は渡された電気代の明細を見て、思わず汗をぬぐう。
「た、たしかに高いな……」
こうして、この家では“節電非常事態宣言”が発令された。
エアコンの設定温度は28度固定。
勝手に変更することは絶対に許されない。
――しかしその日の夕方。
外回りの営業から帰宅した父は、すでに限界だった。
真夏の炎天下を歩き回り、スーツは汗でびっしょり。
体力も気力も完全に消耗している。
「営業回りで死ぬ……」
ふらふらになりながら部屋へ入り、エアコンを見る父。
表示温度はもちろん28度。
だが、父の体にはまったく涼しく感じない。
その時、机の上に置かれたリモコンが目に入る。
――悪魔の囁きが聞こえた気がした。
「こっそり……23度。
パワフルで……!」
父は周囲をキョロキョロと見回す。
誰もいない。
「少しだけなら……バレないよな……」
そして震える指で、リモコンのボタンを押す。
ピッ。
表示温度は23度。
冷たい風が一気に部屋へ広がる。
「はぁぁ……生き返る……」
しかしその瞬間――
背後から、氷のように冷たい声が聞こえた。
「食費を冷気に変えるつもりですか?」
振り向くと、そこには怒りのオーラをまとった優子の姿。
父の背筋に、真夏なのに冷たい汗が流れる。
父は震えながら弁解する。
「いや……これは……ちょっとだけ……」
しかし言い訳は通じない。
その日の夕食。
父の前に置かれていたのは――
一本のアイスだけだった。
テーブルに座り、肩を落としながらアイスをかじる父。
「……涼しいね、これ(涙)」
こうして父は、猛暑と家庭内ルールの板挟みに遭いながら、
またひとつ家庭内ヒエラルキーの厳しさを思い知らされるのだった。
だがこれは、父と娘の間で繰り広げられる
数々の家庭内ルールと理不尽な制裁の、ほんの一幕に過ぎない。
この家では今日もまた、
小さな“家庭内戦争”が静かに続いているのである。


