オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第10話
休日の午後。
洗濯かごに山のように積まれた衣類を前に、父は満足そうにうなずいていた。
「ふぅ、今日もいい汗かいた!
洗濯機にお願いっと。」
文明の利器――全自動洗濯機。
ボタン一つで洗ってくれる、現代社会の頼れる相棒である。
父は鼻歌まじりに、シャツや靴下を次々と洗濯かごへ放り込んでいく。
もちろん、家族の洗濯物も一緒だ。
「えーっと、まとめて入れて回せば楽だよな」
そう言いながら、娘のブラウスを手に取ったその瞬間――
「ちょっと!」
背後から鋭い声が飛んだ。
振り返ると、そこには腕を組んだ娘・優子の姿。
手には父の靴下がつままれている。
「何してるんですか。
私のブラウスと一緒に入れないでください。」
父は戸惑う。
「え? 洗濯機は一緒でいいだろ!?」
しかし優子の表情は真剣だった。
「“加齢臭”という名のウイルスが移ります。
お父さんの服は、菌が死滅するまで手洗いです。」
父は目を丸くする。
「俺の成分はウイルスか!?」
だがその抗議は、まったく受け入れられない。
優子は父の衣類だけをビニール袋にまとめ、完全に隔離する。
どうやらこの家では、父の服はすでに有害物質扱いらしい。
そして数分後――
庭先には、家族の洗濯物が気持ちよさそうに風に揺れていた。
白いシャツ、色鮮やかなブラウス、清潔なタオル。
その横で父は、黙々と洗面器に向かっていた。
手にはシャツ。
水の中でゴシゴシとこすりながら、静かにため息をつく。
「……全自動洗濯機がある時代なのに……」
父は空を見上げる。
「昭和も平成も終わったのに……
俺だけ昭和の風景だ……」
洗濯板の音が、庭に小さく響く。
こうして父はまた一つ、
家庭内ヒエラルキーの厳しさを思い知らされるのであった。
今日もまたこの家では――
文明の利器よりも強い、
娘の家庭内ルールが静かに支配しているのである。


