オリジナルWeb漫画:フリーター奮闘記シリーズ 第8話
ある日の夕方、マサシの部屋に一つの段ボール箱が届いた。送り主は実家の母。
段ボールの側面には、母の見慣れた丸い字で「食べ物」と書かれている。
「また送ってきたのか…」
そう言いながらも、マサシは少し嬉しそうに箱を開けた。
中には、米の袋、レトルト食品、カップ麺、そしてリンゴや梨などの果物がぎっしり詰まっている。
どれも、母なりに「息子が困らないように」と考えて送ってくれたものだった。
箱の一番上には、手紙が一枚入っていた。
「マサシへ
ちゃんと食べてますか?
無理しないでね。
母より」
短い文章だったが、その優しい言葉にマサシは少しだけ照れくさそうな顔をする。
「……仕送り、ありがてぇな」
そんなことをつぶやいた瞬間、スマホが鳴った。
画面には「母」の文字。
「もしもし?」
電話に出ると、母の声が聞こえる。
「ああマサシ? 荷物届いた?」
「最近忙しいんじゃない?体は大丈夫?」
マサシは一瞬だけ言葉に詰まる。
そして、いつものように少しだけ背筋を伸ばす。
「ああ、まあな」
「今ちょっとデカいプロジェクト任されててさ」
本当はただのコンビニのシフトリーダーだ。
それでも、なんとなく「プロジェクト」という言葉に変換してしまう。
「そうなの?すごいじゃない」
母は素直に喜んだ。
「でも体には気をつけてね」
「無理しないで」
その優しい声を聞きながら、マサシは少しだけ胸が痛くなる。
電話を切ったあと、部屋は静かになった。
マサシは箱の中から梨を一つ取り出し、キッチンで皮もむかずにそのままかじる。
「シャクッ」
口いっぱいに広がる甘い果汁。
「……甘いな」
思わず小さくつぶやく。
その甘さは、梨の甘さだけではない気がした。
母の優しさ。
そして、少しだけの罪悪感。
マサシはしばらく黙ったまま梨を食べ続ける。
窓の外では夜の静かな街が広がっていた。
そして翌朝。
鏡の前で服を整えながら、マサシは小さくつぶやく。
「まぁ…親を安心させるための嘘ってのも」
「立派な親孝行だろ」
そう言って、自分に言い聞かせるように頷く。
「今日も社会(バイト)で輝くぜ!」
マサシはいつもの前向き変換を済ませ、部屋を出ていくのだった。


