【サラリーマン奮闘記】第6話「涙の節約ランチと、消えたデータ」

オリジナルマンガ

先週の強制飲み会で発生した12万8千円の自腹会計。そのダメージは想像以上に大きく、斎藤課長の財布事情は完全に崩壊していた。クレジットカードの請求額を見て以来、彼は密かに極貧生活へ突入していたのである。

昼休み。
「ラーメン行きません?」とショウが声をかけると、斎藤は妙に落ち着いた顔で答える。

「俺はダイエット中だ」

そう言って取り出したのは、白米に梅干し一個だけの弁当
タケルはその弁当を見て、心の中で呟く。

(……それ、ダイエットじゃなくて財政難ですよね)

斎藤は梅干しを見つめながら、ため息をつく。

「このままでは小遣いが持たん……」

その時、彼の脳裏にあるアイデアが浮かんだ。

「そうだ!」

「社内の経費削減賞を取ればいい!」

この会社では、コスト削減に貢献した部署に金一封が出る制度があった。斎藤はそれを狙うことにしたのだ。

午後。

斎藤は鬼の形相でオフィスを巡回し始める。

「おいショウ!」

「コピーは裏紙を使え!」

「カラー印刷は禁止だ!」

さらにエアコンを見上げて叫ぶ。

「設定温度は28度……いや、30度に変更だ!」

社員たちは一斉に汗をかき始める。

「明るすぎる!」

斎藤は脚立を持ち出し、蛍光灯を外し始めた。

「電気は半分で十分だ!」

オフィスは薄暗く、蒸し暑い空間へと変わっていく。
社員たちは汗だくで作業していた。

タケルはその様子を見ながら静かにコーヒーを飲む。

(……節約というより、拷問ですね)

そして夕方。

斎藤はまだ何か削減できるものを探していた。

「まだ無駄があるはずだ……」

デスクの裏を覗き込んだ斎藤の目に、大量に絡まった配線が映る。

「なんだこのタコ足配線は!」

「待機電力の無駄遣いだ!」

彼は一本の黒いコンセントを掴む。

「使ってないやつは抜くぞ!」

タケルが慌てて立ち上がる。

「課長、それは絶対に――」

しかし斎藤は叫ぶ。

「うるさい!」

「悪・即・斬!」

ブチッ!!

次の瞬間。

オフィス中のモニターが一斉にブラックアウトした。

静まり返るフロア。

キーボードを叩いていた社員がゆっくり顔を上げる。

ショウが呟く。

「……あ」

「今の……メインサーバーの非常用電源じゃ……」

タケルは静かにため息をつく。

「課長……」

「今、全社員の未保存データが飛びました

そしてスマホを見ながら続ける。

「復旧業者の見積もり、特急料金で――」

20万円です

暗くなったオフィスの中で、斎藤の顔がゆっくり青ざめていく。

梅干しよりも赤くなった顔で震えながら、彼は呟く。

「……節約どころか……」

「大損害じゃないか……」

こうして斎藤課長の経費削減プロジェクトは、
わずか数時間で会社史上最悪のコスト増を生み出してしまうのだった。