【フリーター奮闘記】テツヤ成り上がり|第12話|来なかった連絡

オリジナルマンガ

最終面接の帰り際、面接官はこう言っていた。

「結果は一週間以内にご連絡いたします」

その言葉は、はっきりと覚えている。

だからテツヤは、その日から一週間を、なんとなく意識して過ごしていた。

昼は工場。
夜はコンビニ。

変わらない生活の中で、頭の片隅にずっと残っている。

(……あと何日だ)

日付を確認する回数が増えた。

スマホのカレンダーを見る。
通知を確認する。

それを、何度も繰り返す。

そして――

一週間が過ぎた。

(……あれ?)

その日、特に何もなかった。

電話も来ない。
メールも来ない。

最初は、「遅れてるだけか」と思った。

企業側も忙しいのだろう、と。

だが、二日が過ぎ、三日が過ぎる。

それでも連絡は来なかった。

(……これ、どうなんだ)

不安が、じわじわと広がっていく。

工場の作業中も、コンビニのレジ中も、頭の中はそればかりだった。

(連絡遅れることってあるよな)
(でも、普通は来るよな……)

考えれば考えるほど、嫌な方向にしかいかない。

スマホを開く回数が増える。

通知が来るたびに、反射的に確認する。

だが、それはどうでもいい通知ばかりだった。

ある日の夜。

コンビニの休憩室。

椅子に座り、スマホを見つめる。

何も表示されていない画面。

その静けさが、逆に重かった。

(……来ないな)

ぽつりとつぶやく。

この時点で、もう分かっていた。

“いい結果ではない”ということを。

それでも、どこかで期待している自分がいた。

(いや、まだ分からないだろ)

そう思い直す。

だがその直後、また別の声が頭の中に浮かぶ。

(……いや、分かるだろ)

苦笑する。

どちらも自分だった。

それからさらに二日が過ぎた。

そして――

夜、部屋でノートを開いていた時だった。

スマホが震える。

通知。

メール。

送り主を見る。

あの会社の名前。

一瞬、時間が止まる。

(……来た)

ゆっくりとスマホを手に取る。

開くかどうか、少しだけ迷う。

怖いのか、期待しているのか。

自分でも分からない。

それでも、画面をタップする。

件名。

「最終面接結果のご連絡」

それだけで、すべてを察した。

深く息を吸う。

そして、本文を開く。

「厳正なる審査の結果、誠に残念ではございますが、――」

そこで、視線が止まる。

(……ああ)

最後まで読まなくても分かった。

不採用。

静かな部屋。

時計の音だけが響く。

テツヤはしばらく、スマホを持ったまま動かなかった。

(……やっぱりな)

小さくつぶやく。

ショックがないわけではない。

悔しい。

ここまで来た。

最終面接まで行った。

それでも届かなかった。

その事実は、確かに重かった。

でも――

(分かってたよな)

どこかで、覚悟していた。

連絡が来なかったあの数日間で。

あれが、答えだったのかもしれない。

スマホをテーブルに置く。

天井を見る。

何も変わらない部屋。

それでも、胸の奥には何かが残っていた。

あの頃の自分なら、ここで止まっていた。

「やっぱり無理だ」と。

でも今は違う。

(……ここまで来れたんだよな)

最初は何も考えていなかった。

ただ流されていた。

そこから、考えて、動いて、失敗して。

それでも続けてきた。

その結果が、最終面接。

そして、この“不採用”。

(……悪くないか)

小さく笑う。

負け惜しみではなかった。

本当にそう思えた。

ノートを開く。

新しいページ。

少しだけ考える。

そして、書く。

「最終面接 不採用」

その下に、ゆっくりと続ける。

「でも、ここで終わらない」

ペンを置く。

深く息を吐く。

悔しさは消えていない。

でも、それは前に進むためのものだった。

「……もう一回やるか」

静かにそうつぶやく。

部屋の外は、いつもと同じ夜。

でも、テツヤの中には確実に残っていた。

「やれば、ここまで来れる」

その実感。

それだけで、十分だった。