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【フリーター奮闘記】第18話『成功者のモーニングルーティン』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「成功者の習慣を取り入れること」と、「成功者になること」は別物ということです。

自己啓発書を読んだマサシは、

「朝を制する者が人生を制する。」

という言葉を真っ直ぐ信じ、翌朝5時から理想のモーニングルーティンを始めます。

早起き、瞑想、グリーンスムージー。

一見すると完璧なスタートですが、舞台となるのは散らかった自室。

瞑想中に頭の中では美しいミニマルな部屋を思い描きながら、目を開ければゴミ袋と空き缶が並ぶ現実とのギャップは、この作品ならではの笑いどころです。

さらに、健康のために作ったグリーンスムージーを一口飲んだ瞬間の

「……マズっ」

という素直すぎる反応も見逃せません。

そして最大の見どころは、すべてをやり切ったかのような満足感に包まれながら布団を見つめ、

「……ちょっとだけ」

と横になるシーン。

誰もが経験したことのある”少しだけ”が、そのまま数時間の熟睡へ変わり、

スマホには無情にも

「11:30 AM」

の表示。

最後の

「二度寝最高」

という一言が、成功者を目指したはずの朝を一瞬でマサシらしいオチへ変えてくれます。

【本文】

ある日、マサシはふと思った。

「成功する人間には、共通点がある」

最近読んだ自己啓発書には、そんなことが書いてあった。
成功者は例外なく、朝の時間を大切にしているという。

早起き。
瞑想。
健康的な朝食。

それらを習慣にすることで、人生は大きく変わる――らしい。

マサシは本を閉じ、ゆっくりと頷いた。

「なるほど」

「つまり、朝を制する者が人生を制するってことか」

その瞬間、彼は決意する。

「よし……」

「俺も今日から“成功者”の仲間入りだ」

その翌朝。

スマホのアラームが鳴り響く。

ピピピ(5:00 AM)

マサシは眠そうな目をこすりながら起き上がった。

部屋は相変わらず散らかっている。
床にはゴミ袋や空き缶、脱ぎ捨てた服が転がっている。

しかしマサシは、そんな現実を無視するように本を手に取った。

タイトルは――

『成功者の習慣』

「よし」

「今日から俺も成功者の仲間入りだ」

まずは最初の習慣。

瞑想。

マサシは部屋の真ん中に座り、目を閉じる。

「心を整える……」

「静かな空間をイメージして……」

頭の中に浮かぶのは、白く整ったミニマルな部屋。
観葉植物が置かれ、静かな光が差し込む理想の空間。

しかし――

ふと目を開けると、現実はゴミ袋の山。

視界の端に、空き缶。

ポテチの袋。

脱ぎ捨てた靴下。

「……」

マサシは再び目を閉じる。

しかしどうしてもゴミの存在が気になってしまう。

「ダメだ」

「集中できない」

瞑想は数分で終了した。

次の習慣。

健康的な朝食。

マサシはキッチンでミキサーを取り出す。

バナナ、野菜、粉末の完全栄養食。

すべてをミキサーに入れ、スイッチを押す。

ゴォォォォォン

緑色の液体が完成する。

「よし……」

「成功者のグリーンスムージーだ」

マサシは意を決して一口飲む。

「……」

「……マズっ」

顔が歪む。

青臭さと粉っぽさが口いっぱいに広がる。

しかしマサシは歯を食いしばる。

「成功者は……」

「こういうのを乗り越えるんだ」

何とか飲み干す。

だが、その時点で既にかなり疲れていた。

早起き。

瞑想。

慣れない健康食。

意識の高い行動に、心も身体も消耗していた。

マサシは布団をちらりと見る。

ふかふかの布団。

静かな部屋。

そして思わず呟く。

「……ちょっとだけ」

布団に横になる。

その瞬間。

バタン

「……二度寝最高」

マサシは満面の笑みで眠りに落ちた。

そして数時間後。

スマホの画面にはこう表示されていた。

11:30 AM

成功者のモーニングルーティンは、
半日で終了したのだった。

【作者コメント】

成功者のルーティンや習慣は、本や動画などで数多く紹介されています。

早起き、瞑想、運動、健康的な朝食。

どれも素晴らしい習慣ですが、それだけを真似すれば人生が劇的に変わるわけではありません。

今回のマサシは、その”形”だけを一気に取り入れようとしてしまいました。

散らかった部屋で瞑想を始めたり、慣れないグリーンスムージーを無理に飲んだりと、一つひとつは正しい行動でも、どこか無理をしている様子が伝われば嬉しいです。

そして最後は、誰もが一度は経験したことがあるであろう

「ちょっとだけ横になろう」

という甘い誘惑。

ほんの数分のつもりが、気づけば昼前。

この”あるある”を、マサシらしくコミカルに描いてみました。

成功者の習慣は確かに参考になりますが、一番大切なのは、自分のペースで無理なく続けられることなのかもしれません。

そんなことを笑いながら感じてもらえたら、とても嬉しいです。