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【フリーター奮闘記】テツヤ成り上がり|第30話|自分に投資する

フリーター奮闘記【テツヤの物語編】

【前回のあらすじ】

ネットワークビジネスへの入会を勧められたテツヤだったが、「自分が納得できていないものを人には勧められない」という思いから、入会を断る決断をした。

その気持ちを正直に佐藤へ伝えると、佐藤は意外にもその決断を尊重し、「自分で決めるのが一番だ」と背中を押してくれた。

その後、テツヤはコミュニティのグループチャットを退会し、「流されず、自分で決めた」という言葉をノートに書き残す。

ネットワークビジネス編は幕を閉じたが、この経験はテツヤに「誰かの答えではなく、自分で考えて選ぶこと」の大切さを教えてくれた。そして、物語は新たな一歩へ進み始める。

【今回の見どころ】

今回から新しい章が始まります。テーマは「自分への投資」です。今までは収入を増やすことばかり考えていたテツヤが、初めて「知識を増やすこと」に目を向けます。派手な成功ではなく、小さな積み重ねを選ぶ姿勢は、これまでの経験があったからこそ生まれた成長です。ここからテツヤは、自分自身を少しずつ変えていきます。

【本文】

ネットワークビジネスの話が終わってから、一週間ほどが過ぎた。

生活は、また以前と同じになった。

朝は工場。

夜はコンビニ。

空いた時間には副業。

忙しい毎日に変わりはない。

それでも、一つだけ違うことがあった。

頭の中が妙に静かだった。

(……スッキリしたな。)

何かを無理に信じようとしなくていい。

誰かを誘わなければならないというプレッシャーもない。

それだけで、気持ちはずいぶん軽くなっていた。

ある日の昼休み。

工場の休憩室。

テツヤはスマホでニュースを見ていた。

「生成AI」

「動画編集」

「Webライティング」

「プログラミング」

副業に関する記事が次々と表示される。

以前なら、

「どれが一番稼げるんだろう。」

そう考えていた。

だが今日は違った。

(……俺にできそうなのは、どれだろう。)

初めて、自分を基準に考えていた。

その日の帰り道。

駅前の本屋に立ち寄る。

目的もなく歩いていると、一冊の本が目に入った。

『未経験から始めるWebライティング』

立ち止まる。

ページをめくる。

専門用語ばかりではない。

初心者向けに丁寧に書かれていた。

(……これなら。)

そう思った。

値段を見る。

千八百円。

少しだけ迷う。

(今までなら、安く稼ぐ方法を探してたな。)

そう苦笑する。

だが今回は違う。

「これは、自分への投資だ。」

そう思えた。

レジへ向かう。

本を一冊買うだけなのに、少しだけ緊張した。

帰宅後。

机の上に本を置く。

ゆっくりと読み始める。

最初のページ。

「結果よりも、継続が力になります。」

その一文が目に止まる。

思わず笑ってしまう。

(最近、こんなのばっかりだな。)

でも、不思議と嫌ではなかった。

ページをめくる。

知らない言葉がたくさん出てくる。

分からない。

でも、少し面白い。

「なるほど。」

思わず声が漏れる。

学生の頃は勉強が嫌いだった。

社会人になってからも、本を読むことなんてほとんどなかった。

それなのに今は違う。

知ることが楽しい。

そんな感覚が少しずつ芽生えていた。

翌日。

昼休み。

ノートを開く。

新しいページ。

タイトルを書く。

「覚えたこと」

その下に、昨日読んだ内容を簡単にまとめる。

箇条書き。

ほんの数行。

それだけだった。

でも、そのページは何だか嬉しかった。

夜。

副業の作業を終える。

時計を見る。

まだ少し時間がある。

以前なら動画を見て終わっていた。

でも今日は違う。

本を開く。

十五分だけ。

そう決める。

少しずつ読む。

少しずつ書く。

少しずつ覚える。

大きな変化ではない。

でも、それでいい。

窓の外を見る。

夜景は変わらない。

工場も。

コンビニも。

生活も。

何も変わっていない。

それでも、自分だけは少しずつ変わっている。

そう思えた。

ノートの最後に、一行だけ書く。

「自分に投資する。」

ペンを置く。

小さく息を吐く。

以前は、お金を増やすことばかり考えていた。

でも今は違う。

まずは、自分を増やそう。

知識を。

経験を。

考える力を。

その先に、きっと未来がある。

テツヤは本を閉じる。

そして静かにつぶやいた。

「……焦らなくていい。」

その言葉には、不思議と自信があった。

【作者コメント】

第30話から、新しい章が始まります。

ここで描きたかったのは、「稼ぐこと」ではなく、「学ぶこと」の価値です。テツヤはこれまで、結果を急ぐあまり近道を探してきました。しかし、多くの失敗を経験したことで、少しずつ「自分を成長させることが一番の近道なのかもしれない」と考え始めます。

本を一冊買うという出来事は、とても小さなことです。しかし、テツヤにとっては「誰かに頼る」のではなく、「自分で未来をつくる」という大きな一歩でした。この積み重ねが、これからの彼を少しずつ変えていきます。