オリジナルWeb漫画:不屈な父親奮闘記シリーズ 第30話
家の中での数々の失敗――スマートホームに締め出され、筋トレで腰を痛め、休息すら暴走した結果、もはや家族からの信頼も微妙になりつつあったパパ。そんな中、彼はふと悟る。
「……人工的な環境に頼るからいけないんだ」
そして高らかに宣言する。
「真の男の休息は、大自然の中にある!」
その日から、パパの“アウトドア覚醒”が始まった。
もちろん今回も例によって“形から入る”。ネットで徹底的に調べ上げ、プロ仕様の超大型テント、職人手作りの薪割り斧、さらには本格ピザが焼けるポータブル石窯まで一気に購入。庭に並べては満足げに頷く。
「これが“本物”だ……!」
数日後、満を持して家族を連れてキャンプ場へ。
しかし現地に到着しても、パパの関心は自然そのものではなく、“設営の完成度”へと向かっていく。
「テントは美しくあるべきだ」
そう言いながら取り出したのは、まさかの水平器。
ポールの角度、地面との接地、張り具合――すべてをミリ単位で調整し始める。
「1ミリの狂いも許さん」
その様子に、子どもたちは最初こそ興味津々だったが、次第に飽きてその辺の枝で遊び始める。ママはスマホで時間を確認しながらため息をつく。
それでもパパは止まらない。
薪もただ積むのではない。空気の流れと美しさを両立させた“幾何学構造”を構築。
「これが……芸術だ」
すでに設営だけで数時間が経過していた。
ようやく満足したパパは、コーヒー豆を挽きながら言う。
「この完璧なベースキャンプが完成した時点で……」
「今日の冒険は、実質成功だ」
もはや何もしていない。
そしていよいよ、本日のメインイベント。
「よし、石窯でピザだ!」
意気揚々と薪を運び、火を起こそうとしたその瞬間――
ボキッ。
「あっ……」
腰に走る激痛。
過去のトラウマが、ここで完全復活する。
「ぐっ……これは……!」
その場で膝をつくパパ。
しかしすぐに思考を切り替える。
「……違う」
「今の俺に必要なのは、“動かない勇気”だ」
苦しい表情のまま、必死に理論武装を始める。
「自然の中で何もしない……それこそが真のサバイバル……!」
そう言いながら、逃げるようにハンモックへ倒れ込む。
だが次の瞬間。
「……あれ?」
体勢が固定され、降りられない。
完全に詰んでいた。
その頃、家族はというと――
「お腹すいたね」
「もう待てないね」
結局、ママがカセットコンロを取り出し、手際よくカップ麺を準備。
湯気の立つ麺をすすりながら、星空を見上げる。
「外で食べると美味しいね」
自然を満喫しているのは、完全に家族のほうだった。
一方その横で、ハンモックに揺られたまま動けないパパ。
「……これこそが……自然との一体化……」
苦しそうに呟く。
「究極の……“無”……」
その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
数日後。
パパはまたしても腰を悪化させ、しばらく安静生活へ。
そしてリビングには、新たに「キャンプ用品の山」が増えるのだった。
「……次は“焚き火の極意”からだな……」
懲りていないパパの挑戦は、まだ終わらない。

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