【フリーター奮闘記】第25話『完全リモート接客(物理的労働からの解放)』

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「時代はリモートワークだ。今日から俺は自宅から“アバター接客”でシフトに入る」

出勤してきたタケシが目にしたのは、レジカウンターの横に置かれた奇妙な装置だった。
台車の上にダンボールを積み上げ、その先端にタブレット端末が固定されている。さらに横からは掃除機のホースのような“腕”まで生えており、どう見ても手作り感満載のロボットだ。

そしてタブレット画面には、ベッドの上で寝転がりながらポテチを食べているマサシの姿。

「おはよう。今日から俺は遠隔勤務だから」

「……いや、お前の家ここから徒歩3分だろ」

タケシの冷静なツッコミにも、マサシはどこ吹く風だ。

「これからの時代は効率化だ。俺は“頭脳労働”担当。物理作業は現場スタッフがやればいい」

完全に意味不明である。

そこへ、常連客が弁当を持ってレジにやってくる。
ふくよかな体型に普通の太さの眉毛、どこにでもいそうな会社員だが、この店では妙に存在感がある人物だ。

常連客はタブレットを見て目を丸くする。

「……あれ?レジ係は?」

すると画面越しのマサシが自信満々に答える。

「いらっしゃいませ。商品のスキャンと袋詰めはお客様自身でお願いします。俺は画面越しに全力で見守ります」

「それただの態度のデカいセルフレジだろ!!」

同僚の店員のツッコミが店内に響く。

さらに常連客がレジ裏の商品を指差す。

「あの……後ろの棚のタバコ、一つ欲しいんだけど」

マサシは画面越しに顎をさすりながら言った。

「棚から取ってお客様へ。俺はリモートでマネジメントに回るから」

「お前それただの丸投げだろ!」

同僚の店員の額に青筋が浮かぶ。

マサシはさらに続ける。

「現場を信頼して任せるのもリーダーの仕事なんだ」

「お前は家で寝転がってるだけだろ!!」

ついに堪忍袋の緒が切れた同僚の店員。
彼はレジ台車の上に置かれたタブレットをひったくる。

「バン!!」

タブレットをカウンターに裏返しに伏せた

画面は真っ暗。

店内は一瞬静まり返る。

そのタブレットの下から、くぐもった声が聞こえてきた。

「痛っ……通信エラー……」

「これは……労災だ……」

リモート労災……」

同僚の店員は呆れた顔でつぶやく。

「お前のそれ、ただの通信遮断だろ」

その後、店長の判断により、
マサシの“完全リモート接客システム”は開始からわずか30分で廃止された。

こうしてマサシは、結局いつも通りレジに立つことになったのだった。