【フリーター奮闘記】第5話 『俺だけ時間が止まってる?』

オリジナルマンガ

ある日の夜、マサシは久しぶりに同級生の亮と好美と三人で軽く飲みに行くことになった。場所は駅前の小さな居酒屋。仕事帰りの人たちで賑わう店内で、三人はジョッキを持ち上げながら再会を喜ぶ。

「いやー最近残業多くてさ」
亮は苦笑いしながらビールを一口飲む。

「この前のプロジェクトがさ、なかなか大変でさ」

スーツ姿の亮は、忙しいと言いながらもどこか充実しているように見える。愚痴を言っているはずなのに、仕事の話には確かな実感があった。

一方、好美もグラスを持ちながら笑う。

「私も新しいチームに入ったばかりでね。覚えること多くて大変」

そう言いながらも、どこか楽しそうだった。忙しさを笑いながら話せるのは、それだけ前に進んでいる証拠のようにも見える。

マサシは二人の話を聞きながら、静かに相槌を打っていた。

「へぇ、そうなんだ」
「大変そうだな」

会話には参加している。
しかし、どこか少しだけ距離がある。

仕事の話、将来の話、職場の人間関係。
そのどれもが、自分の今いる場所とは少し違う世界の話のように感じられた。

二人が笑いながら話している横で、マサシはふと思う。

――二人はちゃんと「社会」で生きてるんだな。

そんな考えが頭をよぎる。

グラスを持つ手が、ほんの少しだけ重く感じた。

気づけば会話はどんどん進んでいく。
亮と好美は楽しそうに話し続けている。

マサシはその様子を見ながら、どこか取り残されたような感覚を覚えていた。

――俺だけ、時間が止まってるみたいだな。

そんな思いが胸の奥に浮かぶ。

やがて店を出て、夜の街へ。

別れ際、亮が手を振る。

「また飲もうな!」

好美も笑顔で頷く。

「うん、またね」

二人はそれぞれの帰り道へと歩いていった。

一人になったマサシは、夜道をゆっくり歩く。
少し冷たい夜風が頬に当たる。

しばらく歩いたあと、マサシは小さく拳を握る。

「……比べる必要はない」

「人には人のペースがある」

自分に言い聞かせるように、いつもの前向き変換をする。

「俺は俺の道を行く!」

そうつぶやきながら歩き続けるマサシ。

しかし帰宅して部屋のベッドに座り、ふとスマホを見ると、万歩計の画面が表示されていた。

――今日の歩数 500歩

マサシはその数字をしばらく見つめる。

そして静かにつぶやいた。

「……今日は、心が忙しかったな」

部屋の中には、夜の静けさだけが広がっていた。