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【フリーター奮闘記】第14話 あらすじ『120円の恋心』

フリーター奮闘記【マサシの物語編】

【今回の見どころ】

今回のテーマは、「思い込み」と「恋の早とちり」です。

毎晩22時になると決まって現れる女性客。「毎回同じ缶コーヒー」「いつも自分のレジ」「指先が少し触れた」――そんな小さな出来事を積み重ね、マサシの頭の中では恋愛ドラマが完成していきます。

しかし翌日、期待に胸を膨らませて迎えた22時。彼女は恋人らしき男性と待ち合わせをしていただけだったという現実に直面します。

「いらっしゃいませーーー!!」という最後の空しい叫びは、失恋をごまかそうとするマサシらしさ全開。誰しも一度は経験したことがあるかもしれない”勘違い”を、笑いに変えた一話です。

【本文】

最近、マサシには少し気になることがあった。

毎晩、決まって22時ぴったりに来店する女性客がいるのだ。

年齢は二十代後半くらい。
OL風の落ち着いた雰囲気で、スーツ姿のままコンビニに入ってくる。

そして彼女が買うものは、いつも同じ。

120円の缶コーヒー、一本だけ。

余計なものは一切買わない。
店内を見回すこともなく、まっすぐレジに向かう。

そして――

なぜか毎回、マサシのレジに並ぶ。

最初はただの偶然だと思っていた。

しかしそれが三日、四日、一週間と続くうちに、
マサシの中である確信が生まれていく。

「……なるほど」

「そういうことか」

マサシはレジに立ちながら静かにつぶやく。

「毎日22時、缶コーヒー一本」

「しかも俺のレジ」

「これは……」

「俺に会いに来てると言っても過言じゃないな」

もちろん、ただの近所の住人という可能性や、
たまたま空いているレジに並んでいるだけという可能性もある。

しかしマサシの脳内では、そういった現実的な選択肢はすべて排除された。

「人ってのはな……」

「好意を隠す生き物なんだ」

そしてある夜。

いつものように彼女がレジに並ぶ。

マサシは平静を装いながらバーコードを通す。

「120円になります」

女性は小さく微笑む。

「はい」

お釣りを渡すその瞬間――

指先がほんの少し触れた。

「あ、すみません」

女性は少し照れたように笑う。

その瞬間。

マサシの脳内で閃光が走る。

「……来た」

「完全に来た」

「これはもう確定だ」

(完全に惚れてる)

マサシの頭の中では、すでに次の展開が始まっていた。

「次は連絡先だな」

「いや、まずは軽く会話か」

「いや待て、ここはあえて距離を保つ方が――」

その夜、マサシは妙に機嫌よく帰宅した。

そして翌日。

マサシはいつもより念入りに髪をセットし、
制服もどこかビシッと整えてレジに立つ。

22時。

コンビニのドアが開く。

――彼女だ。

マサシは心の中でつぶやく。

(来たな)

(待ってたぜ)

余裕のある男の表情を作り、レジの前に立つ。

しかしその瞬間。

彼女の後ろから、スーツ姿の男性が店に入ってきた。

「おーい、待った?」

女性は振り返り、明るく笑う。

「ううん、今来たとこ♡」

そう言って、彼女は男性の腕を自然に組む。

二人はそのままコンビニを出て行った。

どうやらここは、ただの待ち合わせ場所だったらしい。

レジの前には、誰もいない。

自動ドアが静かに閉まる。

マサシはしばらくその場に立ち尽くす。

そして突然、誰もいない入口に向かって大声で叫んだ。

「いらっしゃいませーーー!!」

夜のコンビニに、少しだけむなしい声が響いた。

【作者コメント】

「もしかして、自分に気があるのかも……。」

誰でも一度くらい、そんな淡い期待を抱いたことがあるのではないでしょうか。

今回のマサシは、毎日同じ時間に来店する女性を見て、都合のいい情報だけを集めてしまいました。指先が触れただけで未来を想像してしまうあたりは、少し可愛らしくもあり、少し危なっかしくもあります(笑)。

でも実際には、相手には相手の事情があり、自分が見えている世界がすべてではありません。

それでも、人は期待してしまう生き物です。そして、期待が外れた時は少し落ち込んでも、また前を向いて働き、笑って過ごしていくものなのだと思います。

夜のコンビニに響いた「いらっしゃいませーーー!!」は、失恋をごまかすための声だったのか、それとも自分自身を奮い立たせるための声だったのか――その答えは、マサシだけが知っています。

次回も、少しズレているけれど、どこか憎めないマサシの日常をお楽しみください。